縦振りは「飛ばすスイングじゃない」 日本の投高打低を打破する“奥行への対応”

内角低めを本塁打にできるバットの角度とは(写真はフリーマン)【写真:Getty Images】
内角低めを本塁打にできるバットの角度とは(写真はフリーマン)【写真:Getty Images】

日本の野球界に「バーティカルスイング」を浸透させた根鈴雄次氏が打撃理論を語る

 固定観念を捨てスイング軌道を理解することで、打撃の引き出しは増えてくる。野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」が25日、バッティングに悩む選手や指導者に向けたオンラインイベント「打撃強化4DAYS」をスタート。イベント初日となったこの日は、オリックスの杉本裕太郎外野手ら数多くのプロ野球選手を指導する野球塾「根鈴道場」の代表を務める根鈴雄次氏が登場。日本の野球界にバレルバット、縦振り(バーティカルスイング)を浸透させた“打撃革命家”の指導論に、多くの視聴者が注目した。

 昨今は球速150キロが当たり前で、変化球もチェンジアップなど“奥行”で勝負する時代に投入した。打者は様々なボールに対応する必要があり、根鈴さんは「昔のように上から叩くスイングだけでは勝負できないようになってきている」と、“投高打低”の要因を指摘した。

「バーティカルはアプローチの1つの手段。飛ばすための理論ではなく、ミートポイントの幅と思ってほしい。基準として世界のトップリーグはメジャーリーグ。そこではバーティカルアングル(バットの垂直方向への角度)をいかに使っていくかが、捉える確率を上げることに繋がっている。凡打、ゴロにならずライナー性の打球が上がっていくと言われています」

 この日、ゲストコメンテーターとして参加した、ともに球速150キロ超を誇る2人の剛腕も興味津々だった。野球アカデミー「NEOLAB」の内田聖人氏は「前でボールを捉えようとするバッターは楽。真っすぐも変化球も“後ろ”で対応する打者の方がやっかいです」と語り、野球塾「Perfect Pitch and Swing」の長坂秀樹氏も「これ(縦振り)は飛ばすためのスイングと思われがちですが、違います。前にも後ろにもミートポイントに幅のある打者は打ち取りにくい」と、投手目線でバーティカルスイングの“やっかいさ”を表現していた。

ミートポイントの奥行を説明する根鈴雄次氏【写真:編集部】
ミートポイントの奥行を説明する根鈴雄次氏【写真:編集部】

インコース低めをセンター、逆方向へ本塁打にするためには?

 根鈴さんは縦振りを習得するのは「短い期間では難しい」と口にする。細かな技術を根気強く体に染み込ませ、ある程度のフィジカルも必要になるという。指導者によっては賛否あることも承知のうえで「誰も反論できない状況はあります」と、1つの例を挙げた。

「(左打者が)インロー(内角低め)のボールをセンター、(逆方向の)左中間方向にホームランにできるバットの出し方は、縦しか存在しません。その引き出しを持っていると持っていないとのでは違う。そうなると『高めはどうやって打つ? それじゃ打てない』と、よく言われますけどね(笑)」

 根鈴氏は高めの対応について「(全く)同じようにバットを出すわけじゃない」と語りつつ、グリップの位置がヘッドより下がる“大根斬り”ではなく、高めでもバットを垂直方向に入れ「少しでもバーティカルラインに入っていればいい」と、多少の角度が必要だと説明。大げさに下から振り上げるアッパースイングとの違いを理解する必要があるという。

 小・中学生に向けては、縦振りうんぬんよりもまずは「野球を楽しむこと」と前提を置きつつ、習得の第一歩として紹介したドリルが「グルグルバット」。トップハンド(後ろの手)でバットのグリップを持ち、後ろ方向にグルグル回し、最後は勝手にバットが正面に伸びるように扱う。ヘッドが重く、グリップ側が軽いという形状を理解し、活用できるかがポイントだ。「バットは手で振るのですが、重みを上手く利用してほしい。そこの遊びがほしいですね」。他にも地面に置いたボールを打つ練習や、手首を返さない癖づけのために、ボトムハンド(前の手)を使い、相手が投げてきたボールをバックハンドで捕る練習などを紹介していた。

「上手くいかない状況で『なんか違う』というお子さんがいたら2、3年先を見て長く野球と付き合ってほしい。上達とはそういうことだと思う」と根鈴氏。イベントでは視聴者から多くの質問も届き、指導陣が答える場面もあった。野球初心者から上級者までの悩みを解決する「打撃強化4DAYS」は28日まで開催される。

「打撃強化4DAYS」2月28日(金)まで開催中…見逃し配信もあり

 Full-Count、First-Pitchと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、28日まで4夜連続でオンラインイベント「打撃強化4DAYS」を開催中。打球の飛距離を伸ばしたい、確実性を高めたい、低反発バットの対応策を知りたい、などの悩みを抱える選手・指導者・保護者に向けて、小学生・中学生の各野球カテゴリーで豊富な実績を持つ指導者・トレーナー陣がアドバイスしていきます。参加費は無料。出演者などの詳細は以下のページまで。

【打撃強化4DAYS・詳細】

https://first-pitch.jp/article/well/batting/20250219/9960/

【参加はTURNING POINTの無料登録から】

https://id.creative2.co.jp/entry

(First-Pitch編集部)

少年野球指導の「今」を知りたい 指導者や保護者に役立つ情報は「First-Pitch」へ

 球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。

■「First-Pitch」のURLはこちら
https://first-pitch.jp/

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY