「誰のための学童野球なのか…」 子どもが自由に選択できない“スポ少”の難解ルール

小野東スポーツ少年団の園田達也監督【写真:橋本健吾】
小野東スポーツ少年団の園田達也監督【写真:橋本健吾】

全国準Vも「これは本当に正しいのか?」…指導法をアップデートする小野東スポーツ少年団

 限られた人数のなかで育成と勝利を目指していく。兵庫・小野市の学童野球チーム「小野東スポーツ少年団」(以下、小野東)は2016年に全国大会準優勝を果たすなど、様々な大会で好成績を残している。関西の強豪を率いて20年の園田達也監督は、時代とともに指導法をアップデートさせながら全国で通用するチームを作り上げてきた。

 園田監督は2004年から小野東の監督に就任し、2016年には“小学生の甲子園”「全日本学童野球大会マクドナルド・トーナメント」で準優勝、2023年には西日本学童軟式野球大会で初優勝を飾るなど、主要大会でその手腕を発揮している。だが、就任当時は「勝つためには厳しい練習が必要だと思い。がむしゃらにやっていた。でも、全く通用しませんでした」と振り返る。

 打撃、守備、走塁と数をこなす長時間の練習を行い、徹底的に選手を鍛え上げた。いわゆる“昭和の野球”で、時には厳しい言葉で子どもたちにプレッシャーを与えたこともあったという。少しずつ結果が出るようになったが、子どもたちが萎縮するトップダウンの指導に「これは本当に正しいのか?」と、自問自答する日々を過ごすようになった。

 そこで、園田監督は強さだけでなく、選手の育成をもう一度勉強するため動いた。「いいなと思ったところは全て見に行きました」と、県外でも評判の高いチームがあれば自ら足を運び指導法を学んだ。子どもたちにプラスになることを取り入れながら、自らアレンジしアップデートしていくことで手応えを掴んでいった。

“野球脳”を鍛え中学、高校でも対応できる人材作りを目指す【写真:橋本健吾】
“野球脳”を鍛え中学、高校でも対応できる人材作りを目指す【写真:橋本健吾】

部員集めに独自制限も…指導者の役割は「入りたいと思われるチーム作り」

 小野東の部員数は全体で計30人と少ない。市外からの入部は認められているが、クラブチームではなく学校単位で編成される「スポ少」では、部員集めには地区独自の“制限”がある。「入りたいと思われるチームを作ることが指導者の役目だと思います。ですが、部員を確保するため、色々な理由をつけて子どもたちの“自由”が奪われているような気がします。誰のための学童野球なのか考える必要がある」。他校の子どもや保護者が園田監督の指導を希望しても、泣く泣く断りを入れている状況だという。

 それでも、幼稚園の年長や低学年に向けた体験会を月1、2回行い「まずは野球の楽しさを知ってもらう」ことを前提とし、子どもたちと接する機会を必ず作っている。試合や大会で勝つことも必要だが、園田監督が大事にしているのは“野球脳”を鍛え中学、高校でも対応できる人材作りだ。

「小学生は体格差がアドバンテージにもなります。ですが体は成長と共に自然に大きくなってくる。技術を鍛え、実戦での状況判断、走塁の技術もそうです。これらを今の時期に覚えておけば、必ず上のカテゴリーで生きてくる。根気がいる作業ですが、小学生の間に少しでも引き出しを増やせる指導を心掛けています」

 昭和、平成、令和の野球を過ごしてきた園田監督。失敗と反省を繰り返してきたからこそ得られるものがあった。「今まで何千試合とやってきましたが、まだまだ学べることはある」。これからも、子どもたちの気質を見極めながら、個々に必要な指導を続けていく。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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