“高反発禁止”で学童野球の戦い方はどうなる？　長打を求めながらも必要な「3段階打撃」

多賀少年野球クラブ・辻正人監督ら全国強豪監督考える、“飛ぶバット”禁止時代に必須の技術

　新ルールの導入で学童野球は変わっていくのか？　野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」が26日、バッティングに悩む選手・指導者や保護者を対象とした4夜連続のオンラインイベント「打撃強化4DAYS」を開催。2日目となるこの日は、3度の全国制覇を誇る多賀少年野球クラブ（滋賀）の辻正人監督、全国4度出場の東川大雪少年野球クラブ（北海道）の小林弘明監督、2023年に全国準優勝を果たした不動パイレーツ（東京）の田中和彦監督が登場し、大人用の高反発バットが禁止となり転換期を迎えている、小学生軟式野球における打撃指導について語り合った。

　当てるだけで飛んでいく――。バットの力に頼ったそんな打撃は今後、通用しなくなると予想される。学童野球では今年から、安全性確保を理由に、反発力を高めるウレタン素材などを配した一般用（大人用）の複合バットの、公式戦での使用が禁止となった。昨年までのように長打が生まれず、僅差のゲーム展開になりそうだ。3人の監督も「1点を取るためにどうすればいいのか」と、より技術が求められると感じている。バットは変化しても野球のルールは変わらない。その状況に応じた適応能力が求められる。

　東川大雪少年野球クラブでは、走者を進める打撃ができるように、打撃練習の際には打球方向を決めて打つなど「打ち分ける能力」も個々に求めている。不動パイレーツも「効率よく芯に当てること」を意識させるために少年用の複合バットも使わず、木製、金属バットのみで打撃練習を行っている。また、インパクトの強さと捉える感覚を養うため、重みのあるサンドボールを使用する練習もあるという。

　先を見据えスケールの大きい選手を育成したいのは、どのチームも同じ。だが、試合は得点を奪わないと勝つことはできない。勝負所では得点圏に走者を進める打撃も必ず必要になってくる。だからこそ、バントや進塁打ができる選手ほど出場機会は増えてくるという。ただ、辻監督は「1つ勘違いしないでほしい」と注文を付ける。

小林監督が子どもたちに伝えていること「打撃は小、中、大の3段階があるんじゃないか？」

「これだけを見れば一部だけを切り取って『スケールが小さい』と思われがちです。ただ、ラインナップを考えた時に、同じ飛距離（を打てる力）を持つ選手が2人いるとします。どちらを起用するとなれば、走者を進める打撃技術を持った選手です。それが全ての現場の意見だと思います。4打席あれば3打席はフルスイングでいい。でも1打席は状況に応じた打撃をやらないといけない場面もある。だからこそ、バントや進塁打を疎かにしてほしくない。中学、高校に進めばより大事になってくることです」

　試合や大会になれば勝利を目指すことは当然のこと。小林監督も子どもたちには「打撃は小、中、大の3段階があるんじゃないか？」と伝えているようになったという。目指す頂点は本塁打、次に走者を進める打球、そして最後はバント。指導の中では段階を踏みながら「バントや走者を進める打撃ができれば、自由にバットを振って本塁打を狙ってもいい」と、どんな状況でも対応できることを求めている。

　全員が本塁打を打てることが理想だが、試合になれば指揮官から選手に向けて様々な戦術が送られる。バットが替わり、一発長打が出ないとなれば尚更だ。辻監督は「少しでも打撃の引き出しを増やしていく指導が大切になってくると思います」と締めくくった。勝利と育成を大切にする一流指導者が集う「打撃強化4DAYS」は28日まで開催される。

「打撃強化4DAYS」2月28日（金）まで開催中…見逃し配信もあり

　Full-Count、First-Pitchと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、28日まで4夜連続でオンラインイベント「打撃強化4DAYS」を開催中。打球の飛距離を伸ばしたい、確実性を高めたい、低反発バットの対応策を知りたい、などの悩みを抱える選手・指導者・保護者に向けて、小学生・中学生の各野球カテゴリーで豊富な実績を持つ指導者・トレーナー陣がアドバイスしていきます。参加費は無料。出演者などの詳細は以下のページまで。

【打撃強化4DAYS・詳細】

https://first-pitch.jp/article/well/batting/20250219/9960/

【参加はTURNING POINTの無料登録から】

https://id.creative2.co.jp/entry

（First-Pitch編集部）