少年野球の「アナウンス当番」がストレス…“誤解”生む要因は 悩む母へ不安解消のコツ

野球リポーター・羽村亜美さんが伝える球場アナウンスの心構え
少年野球チームに所属する子どもを持つ母親の中には、「アナウンス」に不安を感じる人が少なくない。野球を詳しく理解していないと、球場アナウンスは難しいと思われがちだが、ポイントを押さえれば楽しむ余裕も生まれるという。自身も野球ママで、野球のリポーターとして活躍する羽村亜美さんがコツを伝授する。
最近は保護者の当番を減らす動きが少年野球界で進んでいる。それでも、役割を分担するチームもある。母親に割り当てられる役割の1つが「アナウンス」。公式戦や練習試合で対戦カードやスタメン、時には熱中症への注意喚起といった観客に向けたアナウンスをする時もある。
アナウンスをストレスに感じず、スムーズに対応するにはどうすればよいのか。学生野球からプロ野球まで幅広い現場でリポーターを務め、数年前まで高校野球の地方大会で場内放送を担う女子高校生に研修や指導をしてきた羽村さんは、少年野球の現場でもアナウンスに関する悩みを聞く機会が多い。自身の息子が野球をしていることもあり、当番制で保護者がアナウンスをするチームがある事情も知っている。その中で、“ある誤解”が苦手意識につながっていると指摘する。
「甲子園のウグイス嬢が印象的すぎるのか、独特のイントネーションやエコーを聞かせるような語尾をマネしようとする人が多いです。甲子園風のアナウンスをしないといけないと思っているお母さんが多いのかもしれません」
野球のアナウンスというと、甲子園の場内アナウンスを思い浮かべる人は多いだろう。羽村さんは「ウグイス嬢は基本を身に付けているので、独特なイントネーションでも観客に情報がしっかりと届きます。本職ではない人たちがイントネーションにとらわれると、結果的に大切な情報が上手く伝わりません。野球のアナウンスで一番大事なのは、『伝える』こと。野球のアナウンスだからと特別な意識を持つのではなく、『伝える』ということを意識して自然な話し方をするのが一番です」とアドバイスする。

選手交代や守備位置の変更は「ダイヤモンドの図」が効果的
野球に詳しくない母親からの悩みで多いのは、「選手や守備位置の変更」に関するアナウンスだという。1つのポジションで選手を入れ替えるだけであれば難しくないが、小・中学生のチームでは複数の守備位置を入れ替えて、同時に選手交代をするケースが少なくない。例えば試合終盤、守備を固めて逃げ切りを図ろうとするチームが、次のような変更をする場合がある。
「先ほどの回で代打したJ選手が遊撃、遊撃のF選手が三塁、三塁のE選手が一塁、一塁のC選手に代わってK選手が投手で入ります」
自分の子どもが所属するチームの変更であれば、何とか対応できるかもしれない。しかし、選手の外見と名前が把握しきれない相手チームになると、球審の言葉を聞いただけでは即座に理解するのは難しい。
羽村さんが初心者の野球ママに推奨するのは「ダイヤモンドの図」。野球のダイヤモンドを書いて、守備位置に選手の名前を入れておく。そして、J選手が新たに遊撃に入って遊撃手が三塁へ移った場合は、遊撃の位置にJ選手の名前を書き、遊撃から三塁へ守備位置が代わったF選手の名前は遊撃から消して三塁に矢印を引く。これにより、今どの選手がどこのポジションで出場しているのか一目瞭然になる。

アナウンスをする時はスコアを付けながら試合の行方を追うのが理想的。羽村さんもリポーターや実況をする際にスコアブックを欠かさない。ただ、スコアブックの記入に難易度の高さを感じる場合は、投手=1、捕手=2という守備番号を最優先に覚える。そうすれば、スコアを付けられなくても、ダイヤモンドの図と組み合わせてアナウンスに対応できる。
アナウンスやスコア付けは難しそうに見えるかもしれない。しかし、ポイントを押さえて無理のない範囲で知識を吸収できれば、野球の楽しみが広がる。
○羽村亜美(はむら・あみ)東京都羽村市出身。中学時代はソフトボール部に所属し、高校と大学では野球部のマネジャー。2009年からフリーでアナウンサーやリポーターを務め、楽天やオリックスの中継リポーターを歴任。学生野球や社会人野球の取材経験も豊富で、実況やディレクターも担当している。
(間淳 / Jun Aida)
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