高校から硬式は「時間が足りない」 異例18人が入部…強豪ボーイズが女子チーム設立の背景

女子中学硬式「東都京葉ガールズ」が今春誕生…1期生は18人
全国大会優勝3度を誇る中学硬式野球の強豪「東都クラブ京葉ボーイズ」は今春、女子チーム「東都京葉ガールズ」を立ち上げた。1期生は2年生が2人、1年生が16人の計18人で、中学女子では異例の“大所帯”となった。山本益生監督は、女子も中学生から硬式球を握る効用を説く。
千葉県を拠点に2009年に誕生した「京葉ボーイズ」は全国制覇を3度達成。中学硬式野球で屈指の強豪として知られている。部員増加に伴い2017年に「京葉下総ボーイズ」、2021年に「八街京葉ボーイズ」が発足。そして、今年は「南総京葉ボーイズ」、「市川ボーイズ」が加わった他、女子野球でも活動をスタートさせた。
オーナー兼球団代表の勝本俊朗氏が「野球界の発展には女子野球の充実が必要」とタクトを振り、高校野球でコーチや生徒募集を担当した山本氏が監督に就いた。しかし、昨年夏に選手募集を始めた当時は反応が鈍かったそうで1、2回目の体験会参加者はまさかの0人だった。
危機感を抱いた山本監督は女子高校野球の監督らに話を聞いて回り、女子選手の“育て方”を学んだ。こうして女子野球への理解を深め、中学年代で硬式野球に取り組むメリットを選手や保護者に提示すると、“風向き”は変わったという。昨年10月末の3回目の体験会には17人が参加。「これはいけるかもしれないと思いました」と山本監督は振り返る。関東にある他の女子チームは部員が3学年合わせて15人くらいというから、18人での始動は異例だろう。

中学から硬式野球に取り組むべき“理由”とは
女子選手にとって、硬式球への移行は“難題”だ。硬いボールへの恐怖心、体に当たった時の痛み……。二の足を踏み、中学軟式を選択する選手は少なくないという。だが、高校から硬式に取り組んだ場合、「3年間では時間が足りないと思います」と山本監督は語る。高校から硬式球を握っても、3年間では恐怖心をぬぐえない選手もいると指摘。中学年代で硬式野球のスピード感やフルサイズの距離などを実際に体験することは、高校での活躍に繋がると強調する。
また、山本監督によると男子との一番の大きな違いは「本能的にブレーキをかけてしまうこと」。なかなか自身の100%を出しきれないという。男子よりも体の成長が早い女子。中学生の場合、体が発展途上の男子は“準備期間”の側面もあるが、女子の場合は“勝負期間”であり、男子以上に努力することが重要だと選手に説く。選手の意識はチーム本格始動から1か月半で大きく変わったといい、地道に努力する姿勢は男子を上回ると実感している。
練習ではフィジカルトレーニングを重視。なぜこの筋肉を鍛えるのか、どのような効果があるかなどを選手に具体的に伝えている。「将来お母さんになった時に子どもとキャッチボールやトレーニングできたら……。子どもの隣に最高のコーチ、トレーナーがいたらいいですよね」と思いを明かす。
指導陣は山本監督、コーチ2人(男性1人、女性1人)、女性トレーナー1人。男女2人ずつ計4人が選手を温かく見守る。女子硬式野球の中学単独チームは希少。発足に当たって高校関係者から「待っていました」と歓迎の声が多数上がったという。産声を上げたばかりの京葉ガールズは今後、どんなチームに成長していくだろうか。
(片倉尚文 / Naofumi Katakura)
球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。
■「First-Pitch」のURLはこちら
https://first-pitch.jp/