小中学生の内野守備に潜む“怪我リスク”とは? 体格差とパワー不足を補う「軸足送球」

元ライオンズ・レディース山崎まりコーチ推奨…3段階の“送球上達ドリル”
男子選手とのパワーの違いを経験したからこそ、力を無駄なく最大限に生かす方法を追求してきた。株式会社西武ライオンズが運営するベースボールアカデミーのコーチを務める元女子プロ野球選手の山崎まりさんは、力に頼らない体の使い方を指導の重点に置く。自身も本業としていた内野守備で大切にする動きの1つが、「軸足に体重を乗せてからの送球」。3つのステップに分けたドリルを推奨している。
埼玉西武ライオンズ・レディースで内野手としてプレーしていた山崎さんは昨年現役を引退し、現在は小学1年生から中学3年生を対象にしたアカデミーでコーチを務めている。指導では技術に加えて、怪我の予防も重視しているという。
「特に小学生は、体に負担がかからない動きが身に付く指導を心掛けています。うまくなってもらいたいのはもちろん、少しでも長く野球を楽しんでもらいたいと思っています」
まだ成長途中の小・中学生が力任せにプレーをすると、怪我のリスクは高くなる。内野守備で目立つのは、「スピードを意識し過ぎたプレー」。アウトを取るために素早く動き、速い送球をしたい気持ちは十分に理解できる。ただ、山崎さんはこう指摘する。
「急いで送球しようとし過ぎて、腕に頼った投げ方をする選手が多いです。肩や肘に負担がかかってしまいますし、足を使わないと送球に力強さを出すのは難しいです。速く送球したい意識が強すぎて、頭や上半身が突っ込んでしまう投げ方をする傾向があります」

力強い送球に不可欠…軸足に体重を乗せる3つのドリル
正確な動きを身に付ける前からプレーのスピードにこだわる選手には、1つ1つの動きを分解して説明する。中でも、大切にする動きの1つが「軸足に体重を乗せてからの送球」。山崎さんは3つの段階に分けたドリルを勧めている。
1つ目のドリルは、浮いたボールを捕球して一度軸足(右投げの場合は右足)に体重を乗せた状態で止まってから送球するメニュー。わずかな時間でも動きを止めることで、軸足に体重を乗せる感覚をより掴みやすくなる。
2つ目はゴロを捕球してから、ケンケンするように軸足一本で2回地面を蹴ってから送球するドリル。動きの速さではなく、正確さを意識する。
3つ目は2つ目のメニューと内容は同じだが、軸足一本で地面を蹴る回数を1回に減らす。より実戦に近い動きとなっている。
送球する際、山崎さんが軸足に体重を乗せる重要性を特に実感したのは高校生の時だったという。マネジャー登録で野球部に所属して男子選手と一緒に練習する中で、遊撃や三塁でノックを受ける機会があった。中学では二塁専門だった山崎さんは、足を使って送球しないとアウトにできないと知った。
「足の運び方やステップを繰り返し練習しました。男子よりも力が弱い中で強く送球するためにも、足の使い方や体重移動が重要だと感じました。体の使い方がうまい選手を参考にして、下半身の力を指先まで伝える動きを磨きました。守備はステップや球の握り替えなど、体の大きさやパワーとは関係なく上達できる要素も多いので、指導者になった今は子どもたちに伝えています」
肩の強さや体の大きさは努力で克服できない面もある。ただ、自分の力を最大限に生かすプレーは効果的なドリルや反復練習で身に付けられる。
(間淳 / Jun Aida)
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