連盟無所属で「子どもの笑顔増える」 古い学童野球に懸念…創部2年目で“部員急増”のワケ

和気あいあいとミーティングをする流山スターレイズナイン【写真:片倉尚文】
和気あいあいとミーティングをする流山スターレイズナイン【写真:片倉尚文】

年中夢球氏がHC…2023年に発足した学童チーム「流山スターレイズ」

 2023年1月に発足し、着実に部員数を増やしている学童野球チームがある。千葉県の「流山スターレイズ」で、6家庭で立ち上げた新しいチームだ。連盟に所属せず、中学・高校での活躍に繋がる指導で人気となっている。

 監督を務めるのは久須崇行氏。現在は千葉県内の中学校で校長を務める。中学野球部の顧問として27年間指導。松戸市選抜を率いて全国大会に4度出場するなど実績を残した。一方で自身の息子を通じて学童野球に触れ、指導方針に疑問を感じることも少なくなかったという。「罵声怒声や大人の事情でチームを離れる子もいました。そういうチームに意義はあるのかなと思ったこともあります」。

 コーチの玉井智幸氏も中学教諭。野球指導歴は20年以上になるが、小学で野球をやっていた子が、中学でやめることが多いと感じていた。やはり自身の子どもを通じて携わった学童野球でもジレンマを抱いたという。

 一部首脳陣の勝利至上主義や、1年を通じて試合の連続の“過密日程”。練習する時間が取れず、肩肘の故障や試合に出られる子以外はなかなか技術が上達しないなど、デメリットも感じた。

 連盟に所属しないということは“小学校の甲子園”と称される「マクドナルド・トーナメント」など主要大会に出場できないことになる。しかし「オープン大会も複数あるので、何とかいけるのではないかと。結果的に連盟に所属しないメリットの方が大きいと感じています。子どもたちの笑顔も増えました。他の習い事との両立や保護者の負担など、ハードルを下げる必要がありました。野球が子どもたちに選ばれるスポーツになればうれしいですね」と玉井コーチは実感を込めて語った。

 こうして立ち上がった流山スターレイズ。学童やリトルリーグの指導に20年間携わり、現在は野球講演家として全国の少年野球チームを飛び回る年中夢球氏もチームの考えに賛同し、“スペシャルヘッドコーチ”を務めている。

笑顔を見せる流山スターレイズナイン【写真:片倉尚文】
笑顔を見せる流山スターレイズナイン【写真:片倉尚文】

細かな指導で児童育成…キャッチボールは20種類以上

 チームにはいくつもの特色がある。お茶当番はなく、コンプライアンスを遵守し、罵声怒声を排除。月に1~2度、トレーナーが選手の体をチェックする。コーチ陣も充実している。中学野球部顧問の父が5人、野球などスポーツ経験があるパパコーチも多い。練習は土日祝日に行うが、どちらか半日は休みにするほか、ファミリーデーとして月に1度以上の休日をもうけている。最長2か月間、月謝なしで体験できる準会員制度を実施。広く門戸を開き、移籍や再スタートを希望する選手にも参加の機会を提供している。

 長年のキャリアで培われた指導法は綿密だ。何よりも重視しているのはウオーミングアップのリズムアップ体操、走り方作り、キャッチボール。この3つのメニューで2時間程度かけることもある。リズムアップでは体をリズミカルに思い通り動かせるようになることを主眼に、ラダーなどを使った野球の動きに関する様々なメニューに取り組む。

「下半身が鍛えられて足が速くなれば、強い球を投げられ、打てるようになります。リズム感が良くなればステップワークに繋がり守備も上達します。何よりも重視している部分です」と久須監督は力を込める。

 キャッチボールは随時約20種類。肘や手首の使い方を学ぶ投げ方やサイドスローにランニングスロー、体重移動、スナップスロー、クイックスロー……。あらゆる投げ方をメニューに組み込んでいる。「小学生で一番覚えてもらいたいのは投げ方。経験上、変な癖がつき中学でイチから直すのは時間がかかります」と語る。

 中学で数々の実績を残した久須監督だが、小学では勝敗に固執すべきではないと強調する。「勝つ喜びを求めるのは当然だと思います。ですが、勝つためだけの選手起用をする必要はないと確信しています」。

 その取り組みは共感を呼び、発足時は8人だった部員が今年4月時点で30人を超えた。選手育成のノウハウを持った中学教諭を中心とした小学生指導。どんなチームに成長していくか、今後が楽しみだ。

(片倉尚文 / Naofumi Katakura)

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