送球練習を「的当て」で行う深い理由 エラーの原因、引っ掛けを防ぐ“多角度スロー”

福岡の野球塾「SSBA」流大輔氏が伝授…下からも柔らかく投げる送球練習
小学生のスローイング指導では、「上から投げなさい」と基礎を念入りに教えられることが多い。しかし、実際の試合では、必ずしも常に良い体勢で送球ができるわけではない。福岡県久留米市で野球塾「Shootingstar baseball academy(SSBA)」で小・中学生を指導する流大輔さんは、「いろんな角度で投げる練習を普段からしておくことで、より実戦的な送球スキルが身につきます」と語る。腕の角度にバリエーションをつけて投げるドリルと、注意点を教えてもらった。
独立リーグの高知ファイティングドッグスで俊足の二塁手として活躍した流さんは、2015年に立ち上げた「SSBA」で小・中学生を中心に100人前後の生徒を指導。また、中学軟式野球クラブ「久留米フューチャースターズ」の監督を務め、ソフトバンク・牧原大成内野手の練習パートナーも務めるなど幅広く活動している。「野球塾はいろんな感性を磨かせる場所」と、専門の内野守備を中心に子どもたちの可能性を伸ばすコーチングが信条だ。
「小学校の低学年、野球の入り口から守備は“片手”がいい」という持論を持つ流さんは、送球についても、早い段階からより実戦的な練習に取り組むことを推奨する。「野手も投手も捕手も、いろんな状況で投げる可能性が試合では出てきます」。上からだけでなく、さまざまな角度から投げられる準備を普段からしておくことが大切だと語る。
そこで流さんが推奨するのは、前から転がしてもらったボールを捕り、的に向かって上から・斜めから・下からと、バリエーションをつけて投げるシンプルなドリル。いずれの角度も肘・手首の関節を柔らかく使い、的に向かって手を伸ばすように投げるのがポイント。関節が硬くて腕が“横振り”だと、ボールを引っ掛けてしまうので注意したい。
下から柔らかく投げる動作を重点的に練習したい場合は、地面に置いたボールを、片膝立ちでひたすら的に向かって投げる方法もお勧め。「(片膝立ちで)下半身の動きを制限しているので、手で引っ掛けやすくなるのが注意点。より腕を柔らかく使うことに意識を向けられます」。丸めた新聞紙やゴムボールを使えば、室内でも簡単に取り組める。
的を人ではなく、何かしらの“物”にするのも実はポイントだという。「人が相手だと気を遣います。僕もイップスの経験がありますが、送球が悪くなる原因に『相手に綺麗に投げないと』『失敗したらどうしよう』という意識がある。目標が物であれば、余計なことを考えずに投げることに集中できます」。
内野守備指導の専門家として、「守備が上達する・しないの差」はどこから生まれるのか。「1つ1つの動きを、本当に真剣に考えているかが大事」と流さんは力説する。「上手くなる子はすごく細かいところまで考えて練習しようとします。下手投げにしても『結果的にアウトになればいい』ではなく『アウトを取るために、この動きでいく』という考え方が大事です」。1ランク上の守備へ、積み重ねが大きな力になることを信じて、練習を大切に取り組みたい。
(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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