“飛ぶバット”使用禁止で失速する打球 学童指揮官が痛感…求められる「本物の技術」

オール富山JBCの島村監督「打球の速さもだいぶ変わってきました」
昨年までなら手応え十分の打球もフェンス手前で失速する――。9日に兵庫・淡路島で行われた少年野球大会「ミズノベースボールドリームカップ・ジュニアトーナメント1stステージ」では、昨年ベスト4に入ったオール富山JBC(富山B代表)が、西方パワーズ(奈良A代表)にタイブレークの末、逆転サヨナラ負けを喫した。島村伸司監督は「やはり守備が大事だなとつくづく思います」と、昨年との“違い”を口にした。
快音を響かせた打球は高々と舞い上がるも、外野手のグラブに収まった。小学生の軟式野球では、今年からウレタンなどの高反発素材を使用した一般用の複合型バットの使用が禁止された。少年用の複合バット使用は問題ないが、飛距離に関しては「去年のバットなら、というような当たりは何本かありました。もちろん相手チームも。打球の速さもだいぶ変わってきました」と島村監督は分析する。
複合バットは芯でなくても「当たれば飛ぶ」ため乱打戦になりがちだ。しかし、この試合は6回まで1-1の投手戦。オール富山JBCは延長7回タイブレークで3点を奪ったが、その裏にミスも重なり4失点でサヨナラ負けとなった。
「去年までの“飛ぶバット”なら5点差、7点差でもひっくり返せるイメージはありますが。実際にバットが変わってからはバッテリーを含めた守備が大事だなと。打撃練習でもフライより、強くて鋭いライナーを意識していかないと。高く上がったフライでは飛距離が出なくなっている。しっかりとバットを振り切る、芯に当てるなど、これまで以上に技術が求められるようになる」

“飛ぶバット”使用禁止で…変化を見せ始めた学童野球
オール富山JBCは、場所がない、人数が少ないなどの理由で野球を始められない子どもたちをサポートするため2020年に発足。クラブチームで地区ごとの制限もなく、様々な小学校から入部可能で現在は29人がプレーしている。
ミズノドリームカップは「ミスを怒らず、みんなで助け合う」ことを理念にスタートした全国大会。今年で5年目を迎え認知度も上がり、学童野球が目指すべき大会になりつつある。
大会に参加を続ける島村監督は「野球界はいい方向に向かっていると思います。選手を萎縮させてはいけない。ただ、やっぱり大事なところは注意というか伝えてあげることは必要です。それがないと、上で野球をしたり、社会に出た時に困るのは子どもたち。楽しい野球も履き違えないでほしい」と語る。
バットが変わったことで、学童の野球は少しずつ変化を見せている。道具に頼らず、技術を養うことが成長への近道。島村監督は富山から全国に通用する選手を育成するため、これからもグラウンドに立ち続ける。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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