コールド負け寸前から“怒涛の反撃” 熱血監督も涙…弱気な小学生が見せた「初めての光景」

甲斐ジュニアベースボールクラブのナインと中込裕貴監督(左)【写真:橋本健吾】
甲斐ジュニアベースボールクラブのナインと中込裕貴監督(左)【写真:橋本健吾】

山梨・甲斐ジュニアベースボールクラブ、選手たちの幸せを願い「僕は叱ります」

 入部当初は“泣き虫軍団”だった子どもたちが、最後の最後に意地を見せた。8月13日に新潟で行われた“小学生の甲子園”「高円宮賜杯 第45回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」の1回戦。創部5年目で2度目の出場となった甲斐ジュニアベースボールクラブ(山梨)は、5-8で多賀少年野球クラブ(滋賀)に惜敗。コールド負け寸前から怒涛の反撃を見せた。

「このままじゃ山梨に帰れないぞ。お前たちの時間は必ず来る。同じ小学生だ。名前負けはしないぞ!」

 コールド負け寸前だった7点を追う5回の攻撃。中込裕貴監督は最後まで子どもたちを信じ続けた。先頭打者が二塁打を放つと、1死三塁から犠牲フライと2点タイムリーが飛び出し、3点を返して反撃。最終回の6回も2点を加え、なおも2死二、三塁のチャンスを作るなど最後まで強豪・多賀を追い詰めた。

 練習量は“山梨一”を自負している。「必ず午後の練習を集中してやろう。相手の集中力が切れる時が来る。4回以降の攻撃に繋がる、と言いながら、子どもたちは乗り越えてきた」。午前から午後まで続く打撃、守備、走塁練習は今の時代に反するかもしれない。褒めて伸ばす方針が軸とはいえ、グラウンドでは厳しく接し続けた。

「保護者の方には『僕は叱ります』と伝えています。なぜかと言うと、野球を教えてるだけじゃなくて、将来幸せになってもらいたいから。お母さんも叱りますよね? って。それは『このままじゃ困る』って心配だから。子どもに幸せになってもらいたいから叱る。本当の目的は、野球で勝つことの以上に、この子たちが幸せになってほしい。この子たちが、中学や高校、大人になっても、なにかあった時は僕が出てってやりたい」

最後まで諦めずに怒涛の反撃を見せた選手たち【写真:橋本健吾】
最後まで諦めずに怒涛の反撃を見せた選手たち【写真:橋本健吾】

打席で弱気な表情を見せていた選手たちが笑顔で「俺に任せろ」とアイコンタクト

 入部当初は涙を流していた子どもたちも、5、6年生になれば監督に負けないよう必死に食らいついてくるようになったという。いくら、厳しくされようが、つらい練習をしようが、次の日はバッグを背負ってユニホームに着替え、グラウンドに姿を見せた。熱血監督に技術と精神面を鍛えられたナインたちに恐れるものはなかった。

 猛追を見せた終盤の攻撃では、中込監督がこれまで見たことがない光景が広がっていた。これまで打席で弱気な表情を見せていた選手たちが、笑顔で「俺に任せろ」と、監督にアイコンタクトを送る。最後の最後まで誰一人、試合を諦める選手はいなかった。

「百戦錬磨の多賀さんを最後、崖っぷちまで追い詰めた。『その胸のチームロゴを堂々と見せて帰ろうよ』と、初めて言ったんじゃないですかね。滅多に褒めてくれない監督と分かっているんで、子どもたちはビックリしたと思う。子どもたちは泣いていましたが、最高にカッコいい泣き顔だったと思います。強く幸せに生きてほしいというのが指導の根底にある」

 死闘を演じた試合後のミーティング。時に厳しく、そして愛情を注いできた“熱血監督”は目を充血させながら子どもたちを称えていた。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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