速球派投手に振り負けないためには? 亡き恩師の“秘技”で連打…差し込まれない打撃術

4回に生還した武蔵嵐山ボーイズ・比留間颯太(中央)【写真:磯田健太郎】
4回に生還した武蔵嵐山ボーイズ・比留間颯太(中央)【写真:磯田健太郎】

大会前に監督の飯野靖典氏が急逝していた

 中学硬式野球の日本一を決める「第19回全日本中学野球選手権大会 ジャイアンツカップ」に出場した武蔵嵐山ボーイズ(埼玉)は、12日の1回戦で、豊田リトルシニア(愛知)に12-5で勝利した。初回から5連打を放ち2回までに8点を先取。そのまま大量リードを守り抜いた。同チームは大会前に監督の飯野靖典氏が急逝。吉田駿代行監督が指揮を執った。初回から4点のリードを奪えたのは「出来すぎです」と話すも、強みである強力打線が機能した裏には、監督の遺した打撃指導の効果があったという。

 直球をリズムよく投げ込む豊田の先発・鈴木郁翔投手に対して動じなかったのには理由があった。「速いピッチャーでタイミングが取りにくいのが想定されたので、バスター、ノンステップ気味に構えていこうと指示しました。1回負けたら終わりなので」。

 そう振り返る通り、武蔵嵐山の左打者は左手をグリップの少し上からバットの根元辺りで持ち、右打者は重心を少し下げ、足を上げないフォームで対峙。投手にタイミングを合わせてテークバックし、コンパクトに振り抜いた。2番に入り好機を演出した西城心太朗選手は「速い球の投手だとテークバックで詰まりやすいので、最初からバスターにしています。すぐに肩口にバットを持ってきて振り出せるようにして、つなぐことを意識しました」と、振り返る。

 バスター気味でタイミングを取る打法は、今月初旬に急逝した飯野監督が兼ねてよりチームで指導していた打法だった。吉田代行監督は「1年間を通じて(バスターと普通の打ち方の)対応を使い分けられるように指導しています。選手たちとしては当たり前のことだったと思います」。

2番に入った西城はバスター気味の構えで打席に入った【写真:磯田健太郎】
2番に入った西城はバスター気味の構えで打席に入った【写真:磯田健太郎】

飯野監督の指導を存分に発揮

 飯野監督の訃報は、全国大会の移動日に伝えたという。報せを聞いた選手たちは動揺を隠せなかった。「みんな泣いていましたね。かなりショックは受けていたんですが、『でも監督だったら、試合の前に泣いていたら戦えないぞって言うよ』と言葉をかけました」と吉田代行監督。臨んだジャイアンツカップ初戦では、監督の指導を存分に披露し勝利を飾った。

「もう俺らには野球しかないから、という感じで立ち直っていきました。強い子たちです」と、吉田代行監督が評する通り、中学生とは思えないほど気丈に振る舞ったナイン。2回戦は多摩川ボーイズ(ジャイアンツ U15 ジュニアユース、東京)に1-8で敗れはしたが、飯野監督の“置き土産”は、いつまでも彼らの中に残り続けるだろう。

(磯田健太郎/Kentaro Isoda)

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