野球離れも無関係…人気高まる“女子だけ”の選抜チーム 無所属の子も惹きつける魅力

スタートは“トップダウン”も…独自に活動広げる学童女子チーム
今年で13回目を迎える女子学童野球の全国大会「NPBガールズトーナメント2025 全日本女子学童軟式野球大会」が、今月20日まで岡山を舞台に開催されている。その予選を兼ねた東京都大会「東京都知事杯 第14回東京都女子学童軟式野球大会エリエールトーナメント」は、6月8日から7月13日に葛飾区の奥戸総合スポーツセンター野球場などで行われ、「オール江東女子」の初優勝で幕を閉じた。
準優勝は「オール葛飾アイリス」、3位には「品川レディース」と「足立フェアリー」。上位4チームをはじめとして、大会出場26チームのほとんどは、活動する区や市の名前を冠している。
なぜかといえば、「オール」が頭につく上位2チームが分かりやすいが、地区選抜チームの形をとっているから。つまり、女子学童チームは元々、地元の学童野球チームで男子に交じって活動する女子選手が集まり、区や市の単位で女子だけのチームが作られているケースがほとんどなのだ。
もちろん選抜とは形式だけの話で、「選ぶ」より「集める」ことで出来上がっているチームが多いのが実情だ。女子学童野球に関していえば、普通に考えれば本末転倒ともいえるのだが、十数年前にさかのぼると、まず大会開催の動きがあり、大会出場のために地区ごとに女子選手を集めてチームが作られたというケースが圧倒的に多い。
これは東京に限った話ではない。全国大会の「NPBガールズトーナメント」は、市区町村よりもさらに大きなくくりとなる、県選抜チームでの出場も多い。代表チームは主催者から提供される、都道府県名が入ったユニホームで戦う。
当初は“トップダウン”で作られた感が強かった各地の女子学童野球チームだが、大会開始から10年以上の時を経て、個々のチームの在り方は徐々に変わりつつある。いわゆる「選抜チーム」は期間限定のケースが多い。大会出場のために結成され、大会が終わると解散する。たとえば「NPBジュニアトーナメント」のために結成されるジュニアチームは、夏から秋口に結成され、年末の大会で活動を終える。

通年で活動するチームも増加…女子だけで野球をする楽しさ
だが、女子学童チームは年を追うにつれ、自分たちで交流大会やリーグ戦を始めるなど活動の場を広げながら、現在では通年で活動するチームが多くなっている。独自のチームカラーを卒業生から後輩へ受け継ぐといった流れも生まれ、もはや単独チームと変わらない様相なのだ。
また、都大会で優勝したオール江東女子には、数年前から地元チームには所属せず、このチームだけで野球をする選手がいる。それも、聞けば“誰かの妹”のように何かしらのつながりがあった選手ではなく、オール江東女子で野球を始めたいと門をたたく初心者がいるのだという。理由を聞けば、女子だけのチームで野球をするのが楽しいからだという。
地元チームから集まっている選手も「ここで野球をするのは楽しい」と口をそろえる。試合でも、女子学童野球の雰囲気は独特だ。好プレーを称え、ミスした選手を励ます、応援席の保護者まで含めたベンチの一体感、上級生が低学年選手の面倒をよく見る……。こうした光景は女子学童野球に限らないが、それでもほかとは印象が異なる。一番には笑顔が多い。「女子学童野球には、野球の原点がある」という指導者の言葉にもうなずける。
女子野球界全体も、かなりの速度で変化している。女子硬式野球部を持つ高校の数は、この10年ほどで爆発的といっていいほどに増えた。一般的にいわれる野球人口の減少など“どこ吹く風”といった活況ぶりだ。選手たちが野球を続けられる環境があるのは、いいことには違いない。“地殻変動”が始まったばかりの女子野球は、これからどう変わっていくだろうか。
〇鈴木秀樹(すずき・ひでき)1968年生まれ、愛知県出身。南山大卒業後、中日新聞社事業局で主にスポーツイベントの開催に携わる。退社後、フリーライターとして「東京中日スポーツ」「東京新聞」で学童野球を中心に扱う「みんなのスポーツ」コーナーの記者兼デスクとして取材・執筆や編集業務全般を20年以上担当。現在は野球用具メーカー、フィールドフォース社の「学童野球メディア」にて取材、執筆中。
(鈴木秀樹 / Hideki Suzuki)
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