小学生に高価な野球ギアは必要か “プロ仕様”に疑問…全国大会で異彩放った「素手バット」

素手でバットを持ち打席に立つ東16丁目フリッパーズの選手たち【写真:橋本健吾】
素手でバットを持ち打席に立つ東16丁目フリッパーズの選手たち【写真:橋本健吾】

北海道・東16丁目フリッパーズは強打で全日本学童大会16強入り

 学童野球に高額でカラフルな“野球ギア”は必要なのだろうか。8月11日~18日に新潟県で開催された“小学生の甲子園”「高円宮賜杯 第45回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」で、ベスト16の成績を残した東16丁目フリッパーズ(北海道)の笹谷武志監督は「単純に必要ないと思いますね」と、ナイン全員が手袋を付けず試合に挑んでいた。

 手袋やリストバンド、サングラスにエルボーガード……。今では小学生でもプロ野球選手並みの野球ギアを使う選手が増えている。学童野球ではゴム製の軟式球、バットも打球部に反発用のウレタンなど使用した「複合バット」がメイン。硬式に比べると危険度や怪我に繋がる恐れは低いため、プレー以外の“見栄え”を重視する傾向があるという。

 今大会でも出場チームを見渡すと、色鮮やかなギアを着用する選手たちの姿が目立った。そんな中、東16丁目フリッパーズの選手たちは打席に素手で入るなど、至って“シンプル”な装いでプレーを続けた。笹谷監督は「手汗がひどい子や、マメを潰して痛いという選手には自己申告してもらっています。私はそもそも、小学生には必要ないんじゃないかと思っているので」と理由を説明する。

 試合だけでなく、練習でも野球ギアはつけないという。バットの先や根本で打っても、手がしびれることはなく、金属や複合バットのグリップは手になじむ素材で滑ることもない。手袋は高いもので1万円近くするものもあり、金銭面の負担を抑えられる。

東16丁目フリッパーズナインと笹谷武志監督(左)【写真:橋本健吾】
東16丁目フリッパーズナインと笹谷武志監督(左)【写真:橋本健吾】

素手でバットを振り込み、選手たちからの“猛アピール”も

「バッティング練習で1回1回、手袋をつけ替えたりするでしょ? 練習で何回もそんなことがあれば『早くやれ』って(笑)。時間もかかるし、まずはやることをやろうよって。中学や高校にいけば、嫌でもつけるようになるんだから」

 素手でバットを振り込むことで、選手たちからの“猛アピール”もあるという。「ほんと、可愛いですよ。『監督見てください。バット振りすぎてマメができたので、手袋を使っていいですか?』って。おお、それならいいぞ! って言ってやります」。今大会では練習でバットを振り続けた成果をいかんなく発揮した。

 1回戦ではIBCレイカーズ(熊本)に5-4でサヨナラ勝利すると、2回戦では10得点と打線が爆発し越中島ブレーブス(東京)を撃破。ベスト8をかけた3回戦は強豪・多賀少年野球クラブ(滋賀)に1-6で敗れたが、全国の舞台でも通用する打撃を見せつけた。

 全国大会で3試合を戦った笹谷監督は「選手たちはよく頑張った。ただ、ミスが出れば負ける。勝ち切るために必要なものが分かったと思います。勝ち切れるチームを作っていく」と、再び全国の舞台に戻ってくることを誓った。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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