77歳監督痛感「野球をやる子少なくなった」 チーム作り困難も…過疎地から示す“古豪の底力”

秋田・牛島野球スポーツ少年団が28年ぶりの全日本学童大会出場で8強入り
学童野球界の「古豪」が、28年ぶりにたどり着いた全国の舞台で躍動した。8月11日~18日に新潟県で開催された“小学生の甲子園”「高円宮賜杯 第45回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」で、牛島野球スポーツ少年団(秋田)が8強入り。1986年の第6回大会以来の優勝には届かなかったが、堂々の勝ち上がりで復活の兆しを見せた。
吉田敏雄監督は今大会の出場チームの指揮官では最高齢の77歳。日本一になった数年後に就任し、40年近く指揮を執っている。前回出場した1997年の第17回大会でも采配を振るい、当時は初戦敗退を喫した。
今大会はいずれも3点差以内の接戦を制して8強入りし、16日に行われた準々決勝は最多優勝回数を誇る強豪・長曽根ストロングス(大阪)に敗れたものの、2-4と善戦。吉田監督は試合後、「よく頑張った。負けて満足しているわけではないけど、胸を張って帰れる」と感慨深げな表情を浮かべた。
吉田監督は「学校そのものが減ってきて、野球をやる子どもも少なくなった。強いチームを作るのは大変」と近年の競技人口減少を嘆く。野球界全体の課題だが、過疎化が進む秋田ではなおさらだ。それでも、選手たちには「人とのつながりを大事にする」ことの大切さを説き、団員を増やすのに苦労しながらも「地域に愛されるチーム」を作り上げてきた。
そんな牛島野球スポーツ少年団がチームとして徹底しているのが「球道即人道」の精神だ。グラウンド内外での礼儀・挨拶・所作には常に気を配っており、吉田監督は選手たちに「学校でも他の人の模範になりなさい」と口酸っぱく伝えている。

一生懸命な「牛島野球」体現した準々決勝5回の同点劇
グラウンド内では「一生懸命野球をやる」のが何よりも大切な礼儀。どんな試合展開であれ、大きな声を出して雰囲気を盛り上げ、全力プレーを欠かさない。準々決勝ではその一端が垣間見える瞬間があった。
両チーム無得点で迎えた5回、2点を先制された。暗いムードになってもおかしくない中、3アウト目を取ると、遊撃を守っていた主将の渡辺想真くん(6年)が「点取るよ!」と叫びながらベンチへ戻ってきた。
その裏、主将の言葉に応えるような攻撃を展開する。2死二塁と好機を作ると、8番・五十嵐陽翔くん(6年)の適時三塁打と9番・佐藤岳恒くん(5年)の適時内野安打で同点に追いついた。「内容は良くなかったけど、同点にできて嬉しかった」とは佐藤くん。打席に立つ時から「絶対に打ってやる」との思いで雄叫びを上げ、塁上では喜びを爆発させた。強豪相手でも臆することなく、一生懸命な「牛島野球」を存分に発揮した。
吉田監督は「すべての面で相手(長曽根ストロングス)が一枚も二枚も上手だった。良い面を真似て勉強してほしい」と教え子たちに期待を寄せた。地域に根付く「牛島野球」は、進化しながら継承されていく。
(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)
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