1試合3度の中断で「流れ」は変わる? 猛暑対策は大賛成も…“小学生の甲子園”で聞いた本音

選手に指示する多賀少年野球クラブ・辻正人監督【写真:橋本健吾】
選手に指示する多賀少年野球クラブ・辻正人監督【写真:橋本健吾】

全日本学童大会では2回と4回に給水タイム、3回にはグラウンド整備で試合が“中断”

 野球は「間(ま)のあるスポーツ」と呼ばれ、ふとした瞬間で試合の流れは変わってしまう。高校野球では2年前からは熱中症、猛暑対策としてクーリングタイムを取り入れたが、学童野球にもその流れは浸透している。アドレナリン全開の状態から一度、試合が止まる状況を指導者はどのように捉えているのか。今月新潟で開催された小学生の全国大会「高円宮賜杯 第45回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」で“本音”を聞いてみた。

 47都道府県を代表する53の学童野球チームが頂点を争った大会は、長曽根ストロングス(大阪)が、史上最多となる8度目の優勝を飾り幕を閉じた。“小学生の甲子園”らしく、本家に負けない熱戦が繰り広げられた。そんな中、各指導者が重要視していたのは「給水タイム」の使い方だった。

 今大会でも給水タイムは設けられ、2回と4回終了後に5分間の休息が与えられた。それに加え、3回終了後にはグラウンド整備が行われるため、試合は計3度止まることになる。学童野球は6イニング制と短く、3度の“中断”は選手たちを管理する指導者たちの腕の見せ所だった。

 子どもたちの健康を最優先に考える対策には、全ての指導者が「素晴らしいこと。これで熱中症になる選手はほとんどいなくなるのでは?」と肯定的。一方で試合をマネジメントする視点での難しさもあったという。

 史上初の大会3連覇を狙い、惜しくも初戦で強豪・多賀少年野球クラブ(滋賀)に2-4で敗れた新家スターズ(大阪)の吉野谷幸太監督は「これはお互い同じルール」と前置きしながら「子どもたちの集中力は少し切れてしまう部分はあると思います」と口にする。

新家スターズ・吉野谷幸太監督(右)【写真:橋本健吾】
新家スターズ・吉野谷幸太監督(右)【写真:橋本健吾】

多賀少年野球クラブの辻正人監督「選手と会話する時間があるので凄くいいなと」

 この試合では新家が後攻で、給水タイム明けの3回と5回に2点を失い敗れた。選手たちは給水タイム中にグラウンドでのキャッチボールができず、5分間はベンチ内で待つ必要がある。「投手には初回を含めて“立ち上がり”が3回あるから緊張感を持っていこう、と伝えていました。子どもたちはどちらかというと後攻の方が難しいのかなと感じました」と振り返っていた。

 ベスト16に入った東16丁目フリッパーズ(北海道)の笹谷武志監督も「少し間延びする部分はあるかもしれませんね。『このイニングをサッといきたい、気持ちの部分で守ろう』としたところで一旦、スッと抜けてしまう。リズムが崩れる部分もある。その試合の中の、間じゃないところに間ができるっていうのはちょっと難しさはありますけれども、両チームが平等な時間なんで。まあ、それは使い方次第で慣れていくしかない」と指摘していた。

 一方で3度の中断は「メリットの部分もある」と口にしたのが、ベスト4に入った多賀の辻正人監督だ。学童野球の試合は90分制で、攻守交替など急がされる場面もある。それだけに「試合の中でミーティングが3回できる。選手と会話する時間があるので凄くいいなと思いました。後攻なら初回と3回は綺麗なグラウンドで、イレギュラーの心配がない状態でプレーできるのは助かります」と語る。

 今大会は降雨により試合中に最大1時間を超える中断もあった。他チームの指導者からも「雨や曇りで涼しい時は両チームの許可を取り1回にする」や「4回終了時の給水タイムとグラウンド整備を一緒にしてもいい」との意見もあった。子どもの体調面を考慮しつつ、臨機応変な対策ができれば、6イニング90分の試合もより白熱していくかもしれない。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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