キャッチボールが疎かな子は「絶対うまくならない」 全国16強学童が廃止した“悪習慣”

今年のマクドナルド・トーナメントで16強入りした「東16丁目フリッパーズ」
寒冷地の弱みを強みに変え、チームは進化し続けている。新潟で開催された“小学生の甲子園”「高円宮賜杯 第45回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」で、ベスト16入りした東16丁目フリッパーズ(北海道)は、流れで行うキャッチボールを“廃止”し、技術向上に繋げたという。
北海道の冬場は想像以上に厳しい。冬から春にかけ雪が積もり、実際のグラウンドを使った実戦練習はほとんどできない。ボールを使った実戦形式の練習もできる地域に比べると大きなハンデに思えるが、笹谷武志監督は「それは言い訳でしかありません。逆にこの環境をいかしていくことを考えています。工夫すれば個々の能力を上げるいい機会になります」と、プラスに捉えている。
これまでの指導歴や最新の理論などを組み合わせた打撃、守備、走塁、ピッチングなどの練習ドリルは100パターンにもなる。「グラウンドに出ると派手な練習をしたがるじゃないですか。でも僕らは主に室内。そしたらもう各パーツを鍛えていくしかありません。狭い空間でも練習ではなく“野球”をやるだけです」。日々、進化していく練習メニューのなかで「そういえば最近、変えたんですよ」と語るのがキャッチボールだ。
これまでノック前の“肩慣らし”のように行っていたキャッチボールは廃止した。トップの作り方やテークバック、股関節の使い方など「正しいフォーム」を根本から見直した。段階を踏みながら徐々に距離を伸ばし時間をかけて行うことで、適当にボールを投げる選手が減ったという。
「キャッチボールを疎かにする選手は、絶対にうまくならない。『遊びで投げるのはダメ』と、口うるさく言っています。内外野のスローイング、投手ならピッチング。全ての基本がキャッチボールに詰まっています。冬場は室内でやるからこそ、トレーニングや基礎に時間をかけられます。それはメリットかもしれませんね」
高校野球をみても、かつて雪国のチームは不利とされてきたが今は違う。アップデートされた指導者たちが増え、温暖な地域のチームと互角以上の戦いを繰り広げている。
東16丁目フリッパーズも今や強豪チームに成長し、2017年には全国制覇も達成している。「子どもたちの能力を引き出すことが指導者の役目。全国に通用する選手を育てていきたい」。知恵と工夫を凝らした笹谷監督の指導は、北の大地にしっかり根付いている。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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