パスボール撲滅へ…悩める捕手が集中すべき“ポイント” 逆球・ワンバンへの対応策

日本通運で10年間プレー…元社会人日本代表捕手の木南了氏
捕手にとって“予測する力”も大事な要素の1つだ。リードだけでなく守備位置の指示、キャッチングにスローイング、ブロッキングなどやるべきことが多岐にわたる過酷なポジション。スポットライトを浴びることが少ない一方、覚えることが多く重要な役割を担う。そんな特殊なポジションで鍵となるのが「先回りすること」。社会人野球の強豪・日本通運で捕手として10年間プレーし、日本代表の経験も豊富な木南了氏が、野球少年少女に学んでほしい技術に言及した。
幼稚園時代に野球を始め、小2から25年以上も捕手を務めてきた木南氏は、キャッチングで「2つ大切にしていることがある」という。「ミットでボールを追わないこと、そしてミットを下から使うこと」。その際、強く意識してきたのが「投げてくるコースにミットを持っていくこと」だ。投手の球は、多少の制球の差があっても、正対する捕手が捕れる範囲に必ず来る。先回りするように「ミットを持っていって構える」のが大事だと強調する。
「ボールを追ってしまうと、捕球する瞬間にミットを(自分の体の方向に)引く動きが生まれてしまいます。そうすると、引いた分を戻さないといけなくなる」。投げてくるコースに先に構えて待つ。捕球する位置にミットを持っていく際、上から下へだと引く動きが生じる場合が多く、下から上へをイメージする。捕ったらミットを閉じるだけ。盗塁阻止のためのスローイングにスムーズに移行するため極力、少ない動作を心がける。
当然、要求したコースに来ないことも多い。逆球や、低めの変化球がワンバウンドした際はどうするのか。「投手のリリースポイントに集中することが重要です」。リリースの瞬間、どのコースに来るかを判断して、そこにミットを持っていって待ち構えるのだという。「投げているのは味方の投手。練習でも受けているし、理解できるものです。実際にやってみると分かりやすいと思いますし、先回りできるようになります。そうすればスムーズにスローイングにも移れるし、めちゃくちゃ大事なことです」。最初に構えた付近だけに対応するのでは駄目なのである。
同じことがショートバウンドの投球を、体やミットで止めるブロッキングの技術にも適用される。「パスボールで一番多い原因は、ボールに対してストップ体勢を作り遅れてしまうことです。だから、ワンバウンドに対して、しっかり自分の形を作っていく必要があります」。両膝をつき両太ももの間にミットを置いて隙間を作らない。球の勢いを吸収し、できるだけ大きくはじかないようにする。その中で「息を吐くことを含め、自分の体に当たった時にどういう力の抜け具合になっているのかなど、細かい点も大事になってきます」という。

キャッチャーミットのブランド「to C」立ち上げ…願う技術向上
ワイルドピッチやパスボールを犯すとピンチが広がり、失点につながりやすい。だからこそ日頃から味方投手の球をよく見ておく必要がある。「変化球がどういうふうにバウンドするのかを理解するだけでパスボールは減ります。味方の球なので、ミスしても言い訳にはできない。仲間を助けるために、計算に入れてプレーするのです」。リリースポイントを見て予測し、普段の投球を観察して理解することでミスを減らせるというのだ。
もちろん捕球後のスローイングも大きなウエートを占める。「先回りはしますが、投球するまで投手はどこに投げてくるか分からないし、走者もいつ走ってくるか分からない。そんな難しい状況で、正確に捕って、走ってきた時に対応して、正しく送球しなければなりません」。大切なのは「どこに投げられても同じ足の動きができるようになること」と力説する。
基本は軸足となる右足に一度体重を乗せ、左足を踏み出して投げる。「下半身が同じ動きができた上で、右足にしっかり力をためていられることが大事。右足にたまったパワーを最後は右手の指先に伝えないといけません」。習得するためにキャッチボールやネットスローでの反復練習を推奨する。強い送球をするためには「強く低く投げることを日頃のキャッチボールから絶対に心がけるべき」と力を込めた。
現役時代からこだわった道具への思いがある。昨年限りで引退した木南氏は、今年3月に日本通運を退社。4月に「株式会社Bloom Path」を設立してキャッチャーミットのブランド「to C」を立ち上げた。理想のミットを追求し、提供する中で「ミットは手の感覚を凄く大事にしています。手の延長線上にあってほしい」と一体感を重視。「型づけ」をして届けるなど、少しでも技術向上に役立てばいいと願っている。
当然、捕手への愛着は強い。「考えること、やるべきことが多くて大変ですけど、キャッチャーをやってきて充実していましたし後悔は1つもありません。ピッチャーに能力を発揮してもらう。それが一番大事です」。捕手を志す少年少女に向けては「バットとの距離感とか怪我だけは注意してほしい」としつつ「好きなキャッチャーを見つけたら、その人のマネをしてやってみるのもいい。いろんなことを経験してほしい」とエールを送る。まずは挑戦すること。捕手の奥深さを感じると、さらに野球が楽しくなるだろう。
(尾辻剛 / Go Otsuji)
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