“6年生初心者”を主役にするスペシャリスト方式 「全員で戦う」を実現する采配哲学

茨城の学童野球チーム・谷田部ジュニアスターズ【写真提供:ノーブルホールディングス】
茨城の学童野球チーム・谷田部ジュニアスターズ【写真提供:ノーブルホールディングス】

茨城の学童野球大会に出場した谷田部ジュニアスターズの起用方針

 8月に行われた茨城の学童野球軟式大会「ノーブルホームカップ」で、心温まる瞬間が生まれた。6年生から野球を始めたばかりの選手が代打で放った2点タイムリーを放ったのだ。この一打は、谷田部ジュニアスターズの村下峰夫監督が大切にする「一人ひとりを輝かせる」指導の素晴らしさを物語っている。

 村下監督の指導で特徴的なのは「一人ひとり、特徴のある選手をどのようにうまく起用するか」を常に考えていることだ。多くの少年野球チームではレギュラーが固定されがちだが、谷田部ジュニアスターズの高学年チームは違う。

「走塁が上手い子、足が速い子がいたら代走で出してあげたい。打撃がいい子はまず代打として活躍してもらって、その後に守備も上手だったら守備固めでも使える」

 監督は、子どもたち個々の「得意なこと」を見つけて、それを活かせる場面を作ることを大切にしている。

 指導の一番のポイントは「みんなで勝ったよ」という気持ちを選手全員が味わえることだ。1つのポジションを複数の子どもたちが担当することで、フル出場できなくても、試合の大切な場面で自分の力を発揮するチャンスがやってくる。

「ベンチにいるメンバーは全員で戦うんだよ」と、いつも子どもたちに伝えている。単なる掛け声ではない。実際に代打、代走、守備固めという大事な役割が全員に回ってくるからこそ、ベンチにいる選手たちも真剣に試合を見つめているのだ。

谷田部ジュニアスターズの村下峰夫監督【写真:編集部】
谷田部ジュニアスターズの村下峰夫監督【写真:編集部】

スペシャリスト方式は、健全な競争環境も生み出す

 健全な競争環境も生まれる。レギュラーが完全に決まっていないので、練習での頑張り次第で誰にでも出場のチャンスがある。6年生から野球を始めた浦野凌輝くんが代打で2点タイムリーを打ったのも、努力が報われる環境があるからだ。

 子どもたちは自分の得意なことを磨くことに集中できる。打撃が得意な子は代打の技術を、足の速い子は代走での判断力を養う。1つのことを深く追求することが、それぞれの技術向上につながっている。

 指導を成功させるには、指導者にも高いスキルが求められる。各選手の特徴を正しく把握し、ここぞという場面で適切に起用する判断力が必要だ。選手一人ひとりと真剣に向き合い、その子の可能性を見極める姿勢があってこそ実現できる指導法と言える。

 すべての子どもたちが野球の楽しさを感じながら成長できる環境づくり。それは同時に、指導者自身の成長にもつながっているのかもしれない。

(First-Pitch編集部)

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