逸材中学生が叩き出した衝撃数値 “異次元”の149キロ…スイング速度も出色「魅力的」

3rdエイジェックカップ初日に実施されたデータ計測…驚愕数値が続々
さすがチャンピオンチームだ。中学硬式野球5リーグの全国王者が“真の日本一”を目指す「3rdエイジェックカップ 中学硬式野球グランドチャンピオンシリーズ」は8月27日、栃木市のエイジェックスポーツ科学総合センターで開会式が行われた。試合に先立ち、最先端の計測機器やトレーニング機材を備えたスポーツ施設で出場選手のデータ計測を実施。中学生の平均レベルを上回る数値が続々と計測された。
昨年まで甲子園球場で決勝戦が行われるなど関西で開催された同大会は、3回目を迎える今年は決勝の舞台は神宮球場。それに合わせて、昨年7月に栃木市にオープンした最先端テクノロジーを駆使するスポーツ施設で、開会式とともに初めてデータ計測などが行われた。投手は球速、回転数、ホップ率など、野手は打球速度やスイングスピードなどをチェック。瞬発力などを計測する体力測定も実施された。
株式会社エイジェックスポーツマネジメントの地域スポーツ事業振興部スポーツサイエンスチーム、佐藤正紘氏は「非常にレベルが高いチームの集まりだと感じました」と感心した様子。中学生の投手の平均球速は110~120キロと言われる中、「どのチームもほとんどの投手が平均で120キロを超えている。平均で130キロを超える選手もいましたし、MAX(最速)が130キロ台中盤の選手も3人いました」と説明した。
球速だけではない。「縦の変化量、ホップ率も高い選手が多い」という。「まだサンプルが少ないですけど、中学生レベルでは上位10~15%に入るような選手が半分以上いました」と驚く。「球速とホップ率は中学生にとっては大きく影響してくると思います」という佐藤氏は「球速に対しての回転数がある選手が多いので、しっかり指にかかった真っすぐがいっていると言えます。空振りを奪える真っすぐですね」と分析した。
さらに変化球にも言及。チェンジアップやフォーク、スライダー、カーブなどを操る投手が複数おり「何人かは落ちる変化球や横滑りのスライダーを持っていました。それぞれの真っすぐとの相性がいい変化球、いわゆる決め球です。選手によって違いはありますけど、中学生にしてはレベルが高い選手が多い」と評した。
野手も逸材がそろっているようだ。計測に当たった根本俊太郎氏は「打者も中学生の平均を大きく上回っている印象です」と切り出し「打球速度の中学生平均は120キロいくかいかないかというところですが、チーム平均でどこも120キロを超えています」と続けた。中でも出色の数値を叩き出したのが世田谷西リトルシニア。「チームの平均が133キロ。群を抜いて出ています。MAXで149キロ出ている選手がいました」と衝撃の事実を明かした。

「中学生離れした体とスイング」「出力という部分で魅力的」
今春のシニア全国選抜大会、8月のシニア日本選手権、ジャイアンツカップも制し“全国3冠”を達成した屈指の強豪チーム。三塁を守る元巨人ヘッドコーチ・元木大介氏の次男・瑛介内野手(3年)も140キロ台を連発し、ナインから「オオッ!」と興奮の声が上がっていた。瑛介は身長173センチだが、チーム内には180センチを超える選手も複数在籍。根本氏は「中学生離れした体とスイングです。出力という部分で魅力的な選手がいました」と目を丸くする。
スイングの軌道、構えからインパクトまでの時間もチェック。スイングスピードについては「100キロを超えるとかなり速いのですが、今回の5チームは平均でほぼ100キロを超えています。中でも世田谷西は109キロと、頭一つ数字が抜けている感じです」。スイングスピードと打球速度はリンクするため、世田谷西は両方の数値が高いのである。
置きティーと試合では状況が異なるため「試合では前からくる球に対するので変わってきます」とした上で「まずそのスイングを出せるかどうか。体の大きさ、出力というところで非常に魅力的なものを持っているという結果が出ています」と説明。佐藤氏も「フィジカル面で突出している。高校生の中に入っても遜色ないような体の大きさの選手もいました」と驚きを隠せなかった。
世田谷西の主将を務める内栫陽向内野手(3年)は計測は初めての経験だと話し「意外な数値もあります。自分の課題に直結する数字が見つかった。その解決の手段が明確に見つかったのは良かったと思います。今後につながっていきます」と貪欲だ。高崎中央ポニーの左腕・上原達也投手(3年)は「2200回転ぐらいが目標。今日は数値が下がっていました」。オール岡山ヤングの右腕・大内義心投手(3年)は「今後の取り組み方とか変わってくる。少しシュート回転気味だったので、もっと縦回転にしたい」と課題と向き合う姿勢を示した。
各チームの指導者にとっても意義深い企画だったようだ。佐賀フィールドナインの若林暁生監督は「こんなに詳しく計測したことはない。プロとかメジャーでは当たり前なんでしょうけど、目の当たりにして凄いなというか、ビックリしている部分はあります」と驚き交じりに感謝する。「貴重な体験。うちの全選手が生まれて初めての体験だと思います。数字が頭にインプットされると思いますので、目標が明確に出た。足りない部分、課題が見えてきたんじゃないかと思います」。
世田谷西の吉田昌弘監督も「こうやって可視化されることは凄く選手本人もモチベーションを上げたり、技術、テクニックの向上にもつながる」と目を細める。ただ、重要なのはこの先にあるという。「大事なのは数値を可視化できて、その数字をうまく利用して、どう上げていくかです。そりゃあ、打つ子は打球速度は速い。そこに技術をどうやって入れていくのかという話になると思います。数字を理解して、そこから変えていくのは難しい部分でもあります」。
数字の現実、課題、モチベーション……。初めての試みは選手にも指導者にも、大きな影響を与えたのは間違いない。
(尾辻剛 / Go Otsuji)
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