中学生年代で「顕著に足りていない」“栄養素” 投球内容にも影響「早く息切れする」

中学硬式野球「3rdエイジェックカップ」で栄養学セミナーを実施
成長期に必要な栄養素を覚えることも、トレーニングの一環である。中学硬式野球5リーグの全国王者が激突する「3rdエイジェックカップ 中学硬式野球グランドチャンピオンシリーズ」が、8月27〜29日に開催。栃木市のエイジェックスポーツ科学総合センターで開会式が行われた27日には、出場選手のデータ計測とともに栄養学セミナーが行われ、中学生に必要な栄養などについて学ぶ場ともなった。
3回目を迎える同大会は、初めての関東での開催。それに合わせ、昨年7月に栃木市にオープンした同センターでデータ計測や栄養学セミナーなどが行われた。セミナー前には検査キットを使用し、選手自身で血液を採取。血液の健康に欠かせないビタミンや鉄分などの栄養素についての講義につなげた。
サプリメントの開発・販売を行っている「NORM株式会社」の取締役CRO・岩垣壮太氏らが講師を務め、中学生が成長するための必要な要素を説明。「運動・食事・睡眠」の3つが重要であることを強調した。運動については各チームとも練習量は十分で、筋力など体の成長には、肉や魚、卵、大豆といったタンパク質を食事で多めに摂取する必要があるという。
1日に必要な摂取量は「自分の体重×2グラム」などと解説。例えば生姜焼き1人前で20グラムだとし「1回の食事で自分の体重×0.3グラムは摂ってほしい。あとは食事のタイミング。中学生は授業もあるので難しいけど、3〜4時間ごとに食事できるのが理想」と伝えた。
もちろんタンパク質以外も大切なものがある。「リカバリー(疲労回復)にはビタミンやミネラルが重要なんです」。にんじん、かぼちゃ、パプリカなどに含まれるビタミンを取ることでタンパク質の吸収率が上がるという。
「例えば肉だけを食べるよりも、ビタミンが豊富な野菜などもしっかりと食べることで、タンパク質の吸収効率は上がります。肉だけで野菜などを取らないと70パーセントくらいしか吸収できないと言われているんです」。野菜が苦手な選手もいるが「もったいない。ビタミンが足りていないかもしれない。野菜がどうしても無理な場合はサプリメントに頼ってもいい」と訴えた。

「成長期特有の鉄不足は血液検査の結果でも顕著」
運動後には糖質を取ることで怪我予防にもつながることなど、限られた時間の中で精いっぱい説明した岩垣氏は「もっと話したいことがたくさんありました」と振り返る。「あまり触れられなかったんですけど、成長期はどうしても栄養が成長の方に持っていかれて、鉄分が不足してしまう。成長期特有の鉄不足というのは血液検査の結果でも顕著に表れるんです」。今回の血液検査の結果にも注目しており、判明次第、各チームに足を運んでの説明を予定している。
「鉄分が不足してしまうと投手が早く息切れしたり、連戦でのリカバリーがうまくいきません。ただ、『鉄分を意識してください』と言っても、なかなか中学生ではわからない。血液検査で数値化してフィードバックすることで、パフォーマンスを効率的に上げていこうとお伝えしています」
鉄分を多く含む食品にレバー、ほうれん草、小松菜、ひじき、マグロなどを挙げ「中学生、高校生がスポーツをやっていく上で必要な鉄分を取ろうと思った場合、ほうれん草なら5束ほど食べないといけないんです」と説明した。
そう聞くと、現実的には難しく感じるため、サプリメントの摂取も推奨する。「成長期の中学生に鉄分が足りていないのは顕著です。食事で取り切れないものは、サプリで補うのも有効です。頑張っても70〜80%しか取れない場合、100%に近づけるものとしてサプリメントがあるのです」。岩垣氏がCROを務める「NORM」は仙台育英や京都国際、高川学園など今夏の甲子園に出場した高校の選手もサポートしており、中学生にも手を差し伸べる姿勢を示している。
選手はもちろん、同行している保護者も熱心に聞き入っていた栄養学セミナー。睡眠の話では10時間以上の睡眠時間を確保するドジャース・大谷翔平投手を例に「勉強もあるから10時間は無理でしょうけど、少しでも睡眠時間を増やしてほしい」と力説し「中学生でも栄養面を頑張りたいという子が増えてくれたらうれしいです」と続けた。
栄養のことを知れば、怪我の予防や体の成長につながる。体の成長は、技術の向上にも関連する。継続して取り組んでもいい試みではないだろうか。
(尾辻剛 / Go Otsuji)
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