創設当初は「バカにされた」 僅か2年で全国4強…軟式クラブが掲げる「正しいことを正しく」

創部3年目の「CLOVERS MIYAZAKI」が“中学生の甲子園”で4強入り
中学軟式野球の日本一を決める“中学生の甲子園”「第42回全日本少年軟式野球大会ENEOSトーナメント」(8月11〜15日、横浜スタジアム)に、創設3年目で初出場したCLOVERS MIYAZAKI(宮崎)が快進撃を見せた。初戦の関西学院中学部(兵庫)に4-3で勝ち、準々決勝では相双選抜(福島)に9-0で大勝。準決勝で強豪・星稜中(石川)に0-1で敗れたが、堂々の戦いぶりだった。宮崎県では初の軟式クラブチーム。“新参者”の歩みは決して簡単なものではなかったという。
チームの発起人は、監督の野崎大史氏だ。今年で41歳。宮崎県に生まれ、日向学院高から明大へ進学し硬式野球部でプレーした。日本ハムとヤクルトでプレーした今浪隆博氏や、日本航空石川の中村隆監督と同期。卒業後は宮崎に戻り公立・私立中で講師をしながら指導を続け、満を持してCLOVERS MIYAZAKIを立ち上げた。2023年4月に本格的に活動を開始し、当初は15人ほどを先着で締め切る予定だったが想像以上の募集があり、1期生は23人になったという。
宮崎県初の軟式クラブを立ち上げたのは、自身が宮崎の中学野球事情を深く知るが故だった。かつては中高一貫校の日章学園中でも指導。現在はクラブを指導しながら公立中の非常勤講師を務めている。自身は小学生から硬式でプレーしたが、「軟式が子どもの発達段階に適していると思っています。硬式は単純に怪我もしやすいですし、軟式出身でも正しいことを正しくやっていれば、十分高校野球で通用するというのも日章学園にいて分かっていたので」。
野崎監督にとっての“正しいこと”とは、野球に臨む上での姿勢だろう。高校でも活躍するには、野球以外の要素が重要だと口にする。「大事なのは学校生活、勉強、チームワーク。人間的成長なくして技術的成長はありません。野球は自分を成長させるための道具の1つでしかない」。確かな自信は、中高一貫で連携した指導を行ってきた前任校・日章学園での経験に裏打ちされている。

立ち向かった心無い言葉、実を結んだ指導
加えて、もう1つが環境面。「宮崎には硬式野球ができる環境が整っていない現状があります。きちんとした球場じゃないと練習も試合もできません。何より保護者の負担も大きいです」。生まれ育った町で打ち込んできたからこそ、その難しさを理解していた。一方でそれをハンデには感じなかった。状況を逆手に取り、県内初の軟式クラブを立ち上げた。
とはいえ、“新興集団”への風当たりは強かった。「周りからは『なんで軟式? 本当に大丈夫?』と言われたり、『うまくいくわけない』とバカにされたりすることもありました」と振り返る。
一方で、コロナ禍が収まり、部活の地域移行の機運も高まりはじめ、県内の指導者や野球関係者もきっかけが欲しかったようだった。「立ち上げた後にすぐ何個もクラブチームができるようになって、今は県内に10チームほどあります。県としても部活の地域移行も始まり、波が来たような感じでした」。今では頻繁にクラブチーム同士で練習試合を行う。先陣を切るような形で輪を広げ、ついに今年全国大会に出場。挑戦が実を結んだ。
「たまたま今は大会で結果が出ているだけ」と謙遜するが、創設3年で全国大会4強入りは大きな足跡。CLOVERS MIYAZAKIの活動には宮崎県外で約40校、県内はほとんどの高校関係者が関心を示しているというから、まさに実の伴った指導への信頼の証だろう。”野崎チルドレン”が宮崎県を席巻する日は、きっと遠くない。
(磯田健太郎/Kentaro Isoda)
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