“投高打低時代”に打力をどう伸ばす？　高反発禁止の影響も…専門家が示す飛距離向上の本質

大谷翔平を指導した白水直樹氏らが説く本物のバッティング技術

　野球界は投手のレベルが著しく向上し「投高打低」の時代に突入している。さらに学童野球での高反発バット禁止や、高校野球での低反発バット導入といった変革は、打者にとって新たな課題となっている。多くの選手や指導者が飛距離向上に悩むなか、小手先の技術だけで対応するのは困難。大谷翔平投手（ドジャース）らをサポートした白水直樹氏をはじめ、専門家が指摘するのは、用具に頼らず、体の正しい使い方を習得する「土台作り」の重要性だ。

・投手優位の時代、打者は根本的な技術の見直しが求められる。
・高反発バットの規制は、選手の将来を考えた技術習得の契機になる。
・飛距離向上の鍵は、体全体を使ったスイングの習得にある。

　日本ハムのトレーナーを務めるなど実績豊富な白水直樹さんは、現代野球では「表面的なバット操作だけでは通用しない」と語る。スイングスピードなどの数値を追い求めるあまり、体のバランスを崩している選手が少なくないという。白水氏が指導の根幹に置くのは、バットを振る前の「重心移動」に代表される、力を最大限に引き出すための体の使い方だ。フィジカルの強さと、それを自在に操る操作性の両輪が機能して初めて、一貫した結果が生まれる。特に、これから高いレベルを目指す選手にとって、この事実に早く気づくことが成長の鍵となるという。

　同じくMLBナショナルズなどでのトレーナー経験を持つ高島誠さんは、学童野球で使用されてきた高反発の大人用複合バットがもたらす弊害に警鐘を鳴らしている。複合バットは、芯を外れたり、「手首をコネる」フォームであったりしても、ある程度の飛距離が出てしまう。これが、選手に「打てた」という勘違いを生んだ可能性があるという。高島氏が小学生年代で身につけたい技術として挙げるのが「トップハンド（バットを持つ後ろ手）」の正しい使い方。「手のひらが上を向いた状態から、インパクトの最後にリストターンするのが理想」と、道具の力に頼らない技術を早期に身につけさせることが重要だと言う。

　大阪桐蔭元主将の“ミノルマン”こと廣畑実さんは、低反発バットの導入によって安易に「ゴロを転がせ」といったスモールベースボールに陥る風潮を危惧。目先の勝利を優先するあまり、選手の可能性を狭めてはならないという。小・中学生の段階から「当てにいく」打撃ではなく、体全体を大きく使ったスイングで「飛ばす感覚」を養うことの必要性を説く。そのために有効なのが、体幹を使わないと振れないロープ状バットなどを用いた練習だ。「体幹主導のインサイドアウト」のスイングを習得することで、将来的にも通用する打撃の礎が築かれると語る。

　3人のプロ指導者の見解は、変革期の今だからこそ、少年野球の指導は選手の未来を見据えた本質的なものに立ち返るべきだという点で一致している。小手先ではなく、体幹主導の正しいスイングや重心移動といった、普遍的な身体操作の習得を優先することが、選手の持続的な成長を促すだろう。

・飛距離向上の本質は、用具ではなく体の使い方にあると理解する。
・「手首をコネる」などの癖を早期に修正し、正しいトップハンドの使い方を指導する。
・目先の安打より、体全体を使った力強いスイングで「飛ばす感覚」を養わせる。

（First-Pitch編集部）