キャッチボール上達で大切な指先の“遊び” 元MLB右腕が伝授「肘から先に出さないで」

日米通算906登板、五十嵐亮太氏が女子小学生向けの野球教室で指導
キャッチボール上達の鍵は、腕の振りに加えて下半身の使い方にある。女子野球のイベント「サンリオベースボールアカデミー in ジャイアンツタウンスタジアム」が15日、東京都稲城市で開催され、五十嵐亮太氏らが講師として参加した。NPBではヤクルトとソフトバンクで活躍し、メジャーリーグではメッツなどでプレー。日米通算906試合に登板した剛腕が、キャッチボールの大切さを説明した。
東京と神奈川の女子小学生203人が参加した野球教室。五十嵐氏はおなかの前で球を持ち、手のひらを上に向けて右手の人さし指と中指だけを使って真上に球を投げながら説明を始めた。「大事なのは指先にかけること。プロ野球の投手も回転や回転の軸を凄く意識してやっています。ただ上げるのではなくて回転をかけながら上げる。これを人さし指と中指の2本と、親指で支えてしっかり上げる。そうするときれいな縦回転になります」。
注意すべきことは回転が斜めや横になること。加えて気楽にやることだという。「遊びながら上に投げる。指先で球をコントロールすることを、遊びながら覚えることによって、しっかり指先にかかるなという感覚をつかめるようになる。遊びながら覚えていくと、よりうまくなります」。そこから応用もできる。「プロ野球選手は同じようにカーブも指先だけで回転をかけられます」。変化球の習得にも役立つのである。
右投げの場合、キャッチボールでは左足を上げ、踏み出すと同時に左手は捕手方向、右手は逆に後ろへと引く。そこでトップの位置を作り、腕を上から振り降ろす。リリースの瞬間に「スピンをかける意識を持って投げてもらいたい」と促し「どういう回転をしているかを意識して見ると、うまく縦回転になっていない場合にも気づける。その辺りも意識してキャッチボールしてほしい」と続けた。
キャッチボールで重要なのは相手の胸や顔付近を狙って、その通りに投げられるかどうかになる。「それを逆からたどっていった時に、タイミングやバランスが大事だと気づきます。体の開きを我慢したり軸が前や後ろに行ったり、倒れないようにするのが基本になってくる」。そんな中で少年少女への指導で感じるのが、体重移動の難しさだという。

腕の振りは「関節の入れ替え」がポイント
「体重移動は凄く重要なんです。右投手なら右足への乗せ方、その後の左足への体重の移し方が大事」。まずは背筋を伸ばして姿勢よく立つ。その上で体重の乗せ方のコツは「軸足の内側、内転筋に乗せるんです。太ももに乗せてはいけません。股関節の内側に乗せるイメージでやると、うまく体重が乗ります」と説明。右投手が軸足の右足から左足へ体重移動する時も「左足の内側、股関節に乗せて押し込むイメージでやるとスムーズにいきます」と説明した。
その際、太ももなど外側に体重が乗ってしまうと「どうしても体が外回りになる」と指摘。体の開きが早くなり、力をロスしてしまうケースが増えてしまう。「基本というより、少しレベルが高い話ですけど、両足の股関節に体重を乗せるのは凄く大事なことです」と繰り返し強調した。
体重移動と連動する腕の振りについては「言葉にすると難しいのですが、関節の入れ替えを伝えるようにしています」という。どうしても腕の力だけで投げようとする子どもが多い中、まずはしっかり肩を回すようにトップの位置を作り、そのまま肩を前に出すイメージで腕を振る。「肩が回ってきたところで肘を返すイメージです。肘から先に出さなくていいんです」と解説した。
技術面以外でも伝えていることがある。「思い切り、体を使ってもらいたい。子どもの時からコントロール良くとか、細かいところをやりすぎると力もついてこない。まずは全身を使って全力で投げることが必要。力を発揮するということを体が覚えないと本来持っている力を出せません。力を出すことによって、どこかに負担がかかっているとか、直すポイントも見つかりやすい。しっかり体を使い切ることが大事なんです」。上半身と下半身をしっかり連動させて、フルパワーを出す習慣を身につけてほしいという。
技術を習得するには、心の余裕も必要だと力を込める。「ボールで遊ぶ感覚とか、遊びながらやることも凄く重要だと感じます。感覚がつかめてくると、投げる時にボールと指先のかかりも自然と理解できるようになります」。野球好きの少年少女は、誰もが一生懸命練習する。それは悪いことではないのだが、時には遊び心を持ってボールに触れることを推奨する。ふとした時、上達のヒントが見つかる可能性があるのである。
(尾辻剛 / Go Otsuji)
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