「お前は通用しない」…心ない言葉に怒り 選手の可能性を潰す指導者の“語彙力不足”

高校、中学、小学の監督・コーチが指摘…指導者が言ってはいけない言葉とは
指導者が発する一言は、選手のパフォーマンスや将来に大きな影響を与える。結果を求めるあまり、意図せず選手の力を削いでしまう言葉を使いがちになる。聖隷クリストファー高の上村敏正監督らは、First-Pitchの取材で具体的なNGワードを挙げ、その逆効果を指摘している。高校野球、中学野球、少年野球の指導者の経験談から、選手の成長を促すための言葉選びについて考えていく。
・「エラーするな」といった否定的な指示は、なぜ選手のミスを誘発するのか。
・選手がプレーをうまくできない時、指導者が最も言ってはいけない言葉は何か。
・指導者の一言は、選手の隠れた才能や可能性をどのように左右するのか。
静岡・聖隷クリストファー高の上村敏正監督は、「三振するな」「四球を出すな」「エラーをするな」という3つの言葉を絶対に言わないという。これらの否定的な言葉は、選手に不安や緊張を与え、かえって失敗を招きやすくするためだ。上村監督は、コップの水をこぼさないように運ぶ子どもに「こぼすな」と言うと、意識が集中しすぎてこぼしてしまう例を挙げる。大切なのは結果を責めることではなく、「どうすれば四球を出さないか」といった過程に選手の意識を向けさせること。具体的な修正点に集中させることで、選手は余計なプレッシャーから解放され、本来の力を発揮しやすくなる。
中学硬式野球の強豪「京葉ボーイズ」の関口勝己監督は、「何でできないんだ」という言葉を指導者が最も口にしてはいけないNGワードとして挙げる。選手がうまくできないのは指導者の力量不足が原因であり、選手のせいではないという。打撃指導の際、言葉で感覚を伝えるのが難しい場合は、角度をつけた台の上でスイングさせるなど、体が自然に正しい動きを覚える練習法を実践。また、指導者自身がプレーの手本を見せることも重要だと語る。指導者が実際に動ける姿を見せることで、子どもたちからの信頼を得られ、指導内容が素直に受け入れられるようになる。
リトルリーグなどで約20年の指導経験をもつ野球講演家の年中夢球(ねんじゅう・むきゅう)さんは、指導者の言葉が選手の可能性を潰してしまう危険性を指摘している。あるコーチが小学生に対して「お前はそこ(のチーム)に行っても通用しない」と発したことに怒りを覚えた経験があるといい、「可能性を見つけるのがコーチの仕事」と断言。年中夢球さんはその子のサイドスローに光るものを見出し、投手に転向させた結果、自分を信じてくれた指導者のためにと大学まで野球を続け、エースにまで成長したという。指導者が選手の可能性を信じ抜く一言が、選手の野球人生を大きく変える。
指導者の言葉選びは、選手の技術的な成長だけでなく、精神的な成長にも深く関わる。否定的な言葉を避け、選手の可能性を信じ、具体的なプロセスに集中させることが重要だ。そこに、選手の力を引き出すヒントが隠されている。
・否定的な指示は、選手を過度に緊張させ、失敗への不安を増幅させ、かえってミスを引き起こす原因となる。
・選手に「何でできないんだ」と言うことは、責任を押し付け、指導者自身の役割を放棄する言葉であるため、最も避けるべき。
・可能性を否定する言葉は自信を喪失させる一方、小さな長所を見つけて信じる言葉は、選手の才能を開花させる契機となる。
(First-Pitch編集部)
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