「打席でタイミングが取れない」の本質は? 反応、足裏、3関節…共通する“課題”

3人の専門家が説く「タイミングの取り方」とは(写真はイメージ)
3人の専門家が説く「タイミングの取り方」とは(写真はイメージ)

「打席でタイミングが取れない…」の本質は? 敏腕コーチ3人がポイントを解説

 少年野球における打撃のタイミングの取り方は、スイングスピード以上に安打の確率を左右する重要な課題だ。打席では投手によって投げるテンポや特徴が異なるため、特定の打ち方に固執すると対応が難しくなる。プロ野球選手も教えるコーチや強豪校の元主将、人気野球塾の指導者が推奨する知見から、素早い反応と下半身のタメ、そして多様な投手に対応できる具体的なドリルと指導のポイントを見ていこう。

・投手のタイプに左右されず、打者が自分のタイミングでスイングするにはどうすればよいか。
・緩いティー打撃から抜け出し、実戦の素早い反応と全身運動を習得する方法はあるか。
・打席で力強い打球を生み出すのに重要な“軸足のタメ”を習得するには、何が必要か。

 ソフトバンクでスキルコーチを務める菊池タクトさんは、タイミングが合わない打者は、投手に崩されているというよりも、「自身のリアクションが遅い」ことが原因であると話す。実際の打席では投球に対し0.3秒ほどでリアクションをして全身運動をする必要があり、反応を養う練習の重要性を強調している。改善に勧めるのは、短く軽いバットとミニボールを使う2種類のドリル。「トスダウンドリル」では、トップハンド(右打者ならば右手)のみでトップを作り、上から落とすボールに素早く反応し、胸を回転させる。「トスアップドリル」では、ボトムハンド(右打者ならば左手)でトップを作り、下からトスを上げてもらい拾うように打つ。もし空振りが多い場合はまず素手キャッチから試してみて、前傾姿勢を作り、足首、膝、股関節をしっかり曲げてからスイングすることが大切だと述べている。

 元大阪桐蔭主将で野球塾を運営する水本弦さんは、スイングスピードは大切だが、普段の素振りと打席でのスイングでスピード差をなくすことが重要であり、特徴が異なる投手に対応できるよう、足を大きく上げたり、すり足をしたり、サイドステップを入れたりと、様々な打ち方を練習し、動きのバリエーションを増やしておくことが役立つと述べている。タイミングを取るのが苦手な選手には、両足の裏を地面にべったりつける「ベタ足」という特徴があり、これが反応の遅れやバランスの崩れにつながってしまう。水本さんは、リズムを取るのが上手くいかない選手には、踏み込む足(右打者なら左足)のかかとが自然と上がり、つま先でリズムを刻みやすくなるオープンスタンスを勧めている。

 人気を博する東京の野球塾「Be Baseball Academy」を運営する下広志さんは、タイミングをとって強い打球を放つためには、軸足で「タメをつくる」動きが鍵を握るという。タメがないとストライク・ボールの判断や変化球の見極めが難しくなり、速球に振り負けてしまうことがある。下さんが推奨するのは、構えた状態から軽く前足をステップし、その反動で軸足に体重を乗せてスイングする「バックステップドリル」。力が逃げないよう軸足を着いた時につま先が外へ向かないことに注意し、軸足の股関節、膝、足首の3関節が「直列の関係性」になるよう意識する。構えと体重移動がうまくいくことで、タメ動作は威力を発揮すると述べている。

 打撃のタイミングを取る技術を向上させるためには、下半身のタメと打席での反応速度、そしてリズムの取り方を総合的に改善することが必要だ。軸足のタメを体に覚えさせ、ベタ足を解消し、リアクション練習を交えて体のメカニクス(仕組み)をチェックしながら練習することで、投手のタイプに左右されない“自分の形のスイング”を養っていきたい。

・足を大きく上げたり、すり足をしたりと打ち方のバリエーションを増やし、リズムを取るのが苦手な選手はオープンスタンスを試し、ベタ足になるのを避ける。
・短く軽いバットとミニボールを使い、トップハンド・ボトムハンドドリルで素早く反応する練習を取り入れ、空振りが多い場合は素手でキャッチして体の使い方を確認する。
・「バックステップドリル」で前足の反動を利用して軸足に体重を乗せる練習を行い、軸足の股関節、膝、足首が「直列の関係性」になるよう意識し、力が逃げない構えを作る。

(First-Pitch編集部)

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