中学生のウエートトレ「絶対避けるべき」 日本一監督が力説…球速アップ効果も「代償大きい」

階段ダッシュをする東海中央ボーイズの選手たち【写真:編集部】
階段ダッシュをする東海中央ボーイズの選手たち【写真:編集部】

“全国2冠”「東海中央ボーイズ」はウエート実施せず…成長期の故障を考慮

 中学生までは“絶対にやってはいけない”トレーニングがあるという。中学硬式野球で今夏、“全国2冠”を達成した愛知「東海中央ボーイズ」の竹脇賢二監督は「重量物を扱う練習は絶対に避けるべき」と強調する。いわゆるウエートトレーニングは、成長期の中学生にとって大怪我につながるリスクが大きいという。

「骨端線が閉じていない中学生に重いものを持たせることはしません。中学生が重量物を使ったトレーニングを行うと、怪我のリスクが極めて高くなります」

 骨端線は成長期に見られる、骨の両端に位置する成長軟骨帯のこと。ここで組織の破壊と生成が繰り返されることで、骨は伸びたり太くなったりする。運動などで刺激を受けると骨内の血流が活発になり、成長が促される。だが、負荷がかかりすぎると身長が伸びにくくなったり、痛みが生じたりする危険性がある。

「骨端線は高1か高2で多くの人が閉じるケースが多いと聞きます。それまでは怪我をした時の代償が大きいです。骨が変形したり、亀裂骨折する可能性があります」。長期離脱を避けるため、決して無理はさせない。複数の投手育成に注力する中、ウエートトレーニングを導入すれば球速も上がりやすいが、「僕は絶対にそのやり方はしません。骨端線が閉じていない状況で無理に球速を上げようとすると、怪我をするに決まっています」と力を込める。

 無理な投げ込みもさせない。複数の投手を育成して4~5人の継投で試合に臨むのが東海中央の戦い方。ウエートトレーニングは体が出来上がってから取り組めばいいという考え方である。

選手たちを指導する東海中央ボーイズ・竹脇賢二監督【写真:尾辻剛】
選手たちを指導する東海中央ボーイズ・竹脇賢二監督【写真:尾辻剛】

「練習量をこなした人が生き残るという昭和チックな考えも」

 その代わり、基本の反復練習や素振り、ランニングでの下半身強化は徹底的に行う。全体練習は土日・祝日のみ行い、平日は自主練習。野手には「200~300スイングは小学生でもやるからね」と伝え、投手には走り込みの重要性を説く。効率的で合理的な練習を推し進める一方で「結局、練習量をこなした人が生き残るという昭和チックな考えも教え込んでいます」という。

 土日・祝日しかできない全体練習はハードだ。午前9時から午後4時までの7時間、2度の補食タイムと昼食時以外は常に何かしらの練習をしている。野手はキャッチボール、ノック、打撃練習を繰り返す。内野手は3グループに分かれ、ノックは2面を使って行い、残った1グループはダイヤモンドの外で手で転がしたゴロ捕球。ネットに向かった打撃練習は最大12か所で行う。休んでいる選手は誰もいない状況を作り上げている。

 今年6月からは、かつて練習開始前に不定期で行っていた階段と坂道ダッシュを再開。50段をダッシュで5本駆け上がり、両足ジャンプで5本上り切る。さらに階段の上の坂道でダッシュ10本。最後に階段25段を5本走る。練習前のウオーミングアップではなく、完全なトレーニングである。

「それをやることで単純に下半身の力がつきました。投げる強さが増しました。野手は打つ時の粘りが出た感じです。後はそれだけのことをやったというメンタルの強さが生まれました」。心技体が充実して手にした“全国2冠”。ウエートトレーニングはしなくても全国で勝てることを証明した、価値ある日本一だった。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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