ピンチの投手に「集中しろ」は逆効果 真面目な子ほど影響…制球力を乱さない“目線入れ替え”

“凝視”が招く「体の硬直」がコントロールを狂わせる…プロが教える解消法
試合で投げる際、「しっかり見ろ」「集中しろ」と言われると、多くの子どもたちは捕手のミットを食い入るように見つめてしまう。その結果、体が固まり、スムーズな動きができなくなることがよくある。オリックス・山岡泰輔投手をはじめ、30人以上のプロ野球選手を指導してきたプロトレーナーの高島誠さんは、むしろ「ぼやっと見る」技術が制球力向上のカギになると指摘する。
高島さんは「投げる方向を凝視してしまう子多くないですか?」と問いかける。これによって起こる問題点は、首の緊張だ。必死に見ようとすることで首が固まり、体全体の動きも制限してしまう。「集中して見ながら首を横に倒してください。倒れにくいですよね」と高島さん。「集中しろ」と言われて投げる方向を凝視してしまうと、前の肩(右投げは左肩)が開き、フォロースルーもうまくとれずに腕振りも弱まり、リリースポイントも後方になってしまう。フォームに悪影響を及ぼしてしまうのだ。
そこで高島さんが大切にしてほしいと語るのが周辺視野。「キャッチャーミットをめがけて凝視してボールを投げる」と「キャッチャーミットはぼやっと見て投げる」を比較してみるといい。凝視すると動きがぎこちなく、ぼんやり見た方がスムーズに投げられることに気づくはずだ。練習としては、シャドーピッチングの際に前側の左目で投げるポイントを「ぼやっと」見て、回転動作をする中で右目に視点を移し替えていく方法(右投げの場合)が効果的だ。
ピンチの場面で集中しようとすると、余計に体が固まってしまう恐れがある。高島さんは「真面目な子ほど、集中しなきゃって思って、めちゃくちゃ体が固まってしまう」と指摘。帽子の裏に「ピンチになったらぼやっと」などと書いておくことを提案している。
うまい選手は決して「一点集中」ではない。周辺視野を活用し、状況全体を把握している。「力を抜け」と「集中」という矛盾した指示に混乱する前に、自分に合った「見方」を見つけることが大切だ。
(First-Pitch編集部)
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