球速アップ生む“投げない練習” 小学生にお勧め…身体操作を高める「3つの土台作り」

横跳び、スクワット、棒ドリル…内田聖人氏らが説く球速アップの土台作り
小学生が球速アップを目指すためには、ボールを投げる練習だけでなく、体の使い方を覚える土台作りが重要だ。特に並進運動(体重移動)に必要な「横の動き」や「股関節の使い方」、回転運動に必要な「上半身と下半身の分離」といった感覚は、投げ込みだけでは習得が難しい側面がある。少年野球の指導に詳しい専門家たちは、ボールを使わないトレーニングで、こうした身体操作能力を養うことが大切だと、そろって指摘している。
・日常生活で鍛えにくい、投球に必要な「横の動き」はどう養うか。
・強い球に必要な体重移動がうまくできないのは、どの関節が使えていないからか。
・「手投げ」を防ぎ、下半身の力をボールに伝える「ねじり」はどう習得するか。
神経系の発達が活発な小・中学生の時期は、動きのバリエーションを増やすことが将来につながる。野球アカデミー「NEOLAB」を運営する内田聖人さんは、ボールを使わない練習も重視している。特に投球動作において並進運動の際に使う「横の動き」は日常生活に少ないため、意識的に強化すると良いという。そこで勧めるのが「ラテラルジャンプ」(横向きジャンプ)だ。これは、着地した方のお尻に力をためるイメージで、素早く全力で横にジャンプを繰り返すもの。低学年向けには、尺取り虫のように体を動かす「インチワーム」を勧めており、体幹や肩を鍛えつつ、手足をイメージ通りに操る能力の向上に役立つという。
球速アップには「体重移動の速さ」と「体幹の回旋の強さ」が欠かせない。野球塾「PPA(ピッチングパフォーマンスアカデミー)」を運営する理学療法士の伊藤聡希さんは、その前提として「ヒップヒンジ」が鍵だと語る。ヒップヒンジとは、股関節を蝶番のように折り畳む動作だ。山本由伸投手(ドジャース)も、この形で力をためているという。しかし、小学生は股関節ではなく膝を曲げてしまいがちで、うまく体重が乗らず地面反力を得られない傾向がある。正しいヒンジの形で股関節を使えると、下半身と上半身が連動しやすくなるといい、スクワットドリルで股関節周りの柔軟性などフィジカルを整え、身体操作能力を高めることが大切だと述べている。
投球で大きな力を生むには、下半身と上半身の「分離動作」が重要になる。中学硬式野球の強豪「関メディベースボール学院」(関メディ)の井戸伸年総監督は、体のねじりやしなりが球速アップにつながると指摘する。そこで関メディで取り入れているのが「胸郭エクササイズ」。1メートルほどの棒を背中で挟み、顔と下半身を固定したまま上半身(胸郭)を動かすトレーニングだ。胸郭が柔らかく使えるようになると、投球時の「手投げ」を防ぎ、柔軟性向上や怪我防止にも効果が期待できる。「小学生は試合が多く、動かせていない関節、筋肉はたくさんある」といい、技術練習と並行して体を扱えるようにする土台作りが大切だと語っている。
球速アップには、闇雲な投げ込みではなく、専門家が示すような体の使い方を学ぶ練習が不可欠と言える。股関節や胸郭、横への動きなど、投球に必要な土台を作るボールを使わないトレーニングが、将来の飛躍につながる。
・並進運動につながる横の動きは、着地でお尻に力をためる「ラテラルジャンプ」で意識的に鍛える。
・体重移動の課題は「股関節」の使い方が原因なことが多く、スクワットドリルで「ヒップヒンジ」の形へ改善を目指す。
・手投げを防ぐ「ねじり」は、下半身を固定して胸郭を動かすエクササイズで分離動作を習得する。
(First-Pitch編集部)
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