学童野球に長時間練習は必要か? 問題なのは“曖昧さ”…親子に支持されるチームの特徴

多賀少年野球クラブ・辻正人監督【写真:早浪章宏】
多賀少年野球クラブ・辻正人監督【写真:早浪章宏】

東農大・勝亦陽一教授と多賀少年野球クラブ・辻正人監督が考える学童野球

 学童野球において「長時間の練習」を巡る議論は尽きない。スポーツ科学・発達科学を専門とし、小学生からプロ野球選手まで幅広い年代をサポートする東京農業大学の勝亦陽一教授は「目標達成のために朝から晩まで練習が必要なら、それはやるべき」と主張する。実際に大会によっては、勝ち進めば2日で4試合など試合が続くことがある。「大事な大会で結果を残すには、どこかで1日野球をやる経験をさせておいた方がいい」という意見には説得力がある。

 一方で滋賀県の学童軟式野球チーム「多賀少年野球クラブ」の辻正人監督は「練習時間を短くすることによって部員が増えた」と効果を強調する。チームとして成果を上げるなら長時間練習は効果的だが、必ずしも全員に必要ではないという視点だ。

 全国制覇3度を誇る多賀少年野球クラブは、柔軟に対応している。「半日で3時間から5時間練習し、残りの時間はグラウンドを開放して親子練習という形にしています」と辻監督は説明する。

 かつては長時間練習だったが、方針転換したことで「午前の3時間では物足りない子どもは、午後から親子でずっと練習している」状況が生まれたという。持久力や暑さの中での集中力持続といった要素は短時間では鍛えにくいが、辻監督は「半日の練習で日本一になる」という実験的な取り組みを続けている。

 高い目標の達成や技術向上にはある程度の量が必要になる。個々の選手がどこを目指していくかが重要で、勝亦教授は「チームの理念と目標、活動内容が(選手と)一致していることが一番大事」と強調する。チーム方針を説明して理解した人に入部してもらうことが基本で、多くの少年野球チームではこの部分があいまいになりがちだ。技術向上に必要な練習時間は、目標によって異なることを認識すべきだろう。

 多賀少年野球クラブのように明確な方針を示し、子どもと保護者が選択できる環境づくりが重要だ。長時間練習が全国制覇への近道だとしても、それ以外の価値観も尊重する柔軟性が、現代の子どもと保護者に支持されている。野球を続けることと高い目標を設定することのバランスを、各チームが模索する時代になっている。

(First-Pitch編集部)

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