投手未経験もマウンドへ→大舞台で“キャッチボール効果” 小学硬式で全国V…指揮官の確信

大阪柴島ボーイズが硬式少年野球団体5リーグの垣根を越えた「MLB CUP」の初代王者に
キャッチボールの重要性を貫き、悲願の日本一を手にした。硬式少年野球5リーグに所属する小学6年生以下の選手を対象にした「MLB CUP 2025」が23、24の両日に滋賀県で行われ、大阪柴島(くにじま)ボーイズが優勝した。チームを指揮する眞野剛監督は、投手経験のない選手をマウンドに送りながら2日間で計4試合を勝ち抜いた。
今大会はリトルリーグだけでなくボーイズ、シニア、ポニー、フレッシュと、硬式少年野球団体5リーグの垣根を越えて初めて開催された。各団体で細かなルールが違うだけに、大会独自のルールにどれだけ適応できるかが、勝ち上がるポイントの1つだった。
大会のグラウンド規格は投捕間15.24メートル、塁間23メートル。主なルールではリード、盗塁は可能で、球数制限は1試合の上限が85球。1試合20球までなら翌日の連投はOKなど、子どもたちの怪我を防止するための独自ルールが採用された。
各チームの監督が最も頭を悩ませたのは投手起用だろう。優勝するには2日で4試合を戦うため、最低でも試合を作れる4投手が必要だった。予選ブロックを勝ち抜くためにエースを投入すれば、決勝トーナメントには登板できない――。様々な駆け引きがあるなかで、眞野監督は決勝戦から逆算し、投手経験のない3人を含めた計7人の投手を起用した。
「ルールにはなかなか悩まされましたけど、これもまた面白いなと思って。大阪柴島はキャッチボールをずっと大事にしてきたチーム。私の持論なのですが、ボールを投げる、打つという動きは全て繋がっている。小学生の野球はキャッチボールができればマウンドに上がれます。正しい投げ方ができていればストライクが入り試合も作れる。投手経験のない3人も臆することなく投げてくれましたし、自信を持って送り出せました」

チームが大切にする「メンタルの維持」
予選ブロックでは投手経験のない3人がイニングを稼ぎ、指揮官が「4本柱」と信頼を置く眞野、東、宮原、仲野を1試合20球以内に抑えることに成功。決勝トーナメントでは準決勝で宮原が完投、決勝は東-眞野の継投で延長タイブレークを制した。
また、眞野監督は大舞台で子どもたちが結果を残せるのは「メンタルの維持」だと口にする。技術はもちろん必要だが、最も重要なことは大好きな野球を続ける心を持ち続けること。大人たちが罵声や怒声で、選手を萎縮させてしまっては持っている力は発揮できない。
「大人でも仕事でもそうだと思うんですけど、メンタルさえ保っていれば、食事はできますし、生きていく活力が出てくると思う。メンタルが崩れてしまうと、元に戻すのがなかなか難しい。親やコーチや監督、大人の顔を見る。そんなくだらない時間は全く必要ないと思います。メンタルさえ潰れなければ、体が大きくなった時に、その子はきっとフィールドで勝負できると思います」
今夏のボーイズ全国大会では準優勝に終わり泣き崩れた選手たち。悔しさを糧に挑んだ「MLB CUP」ではチーム一丸となり栄冠を手にした。「この大会は我々の目標だったので。ほんまに、ようやってくれました。未来に期待が持てる選手たちです。これをきっかけに更なる成長を期待しています」。激闘を終えた指揮官は頬を伝う涙をぬぐい、選手たちを称えていた。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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