1対1のキャッチボールは「動きが雑に」 初心者も即上達…急成長学童の“超効率練習”

平日夜に練習するASAI KIDS・UNITEDナイン【写真:高橋幸司】
平日夜に練習するASAI KIDS・UNITEDナイン【写真:高橋幸司】

平日練習は基礎体力の向上…年間計画に沿った強化を行う千葉「ASAI KIDS・UNITED」

 創部3年で千葉県内屈指の強豪へと成長し、NPBジュニアに2選手を輩出するなど注目を集めているのが、千葉県東金市の学童野球チーム「ASAI KIDS・UNITED」(アサイキッズ・ユナイテッド、以下アサイキッズ)だ。同市に拠点を置く「医療法人静和会 浅井病院」が母体の学童野球チームは、保護者の負担を軽減する運営スタイルとともに、年間計画に沿った効率的な練習メニューで親子からの支持を得ている。どのような方法で育成を行っているのだろうか。

 アサイキッズでは週末の活動に加えて、火曜・木曜の午後6時半〜8時半と週2回、病院敷地内の人工芝グラウンドをメインに平日練習を行っている。取材日にはリズムトレーニングからスタートし、低学年から高学年までの全選手が参加しての綱引き、ボールをバトン代わりにしたリレーと、運動能力向上を目指したトレーニングを約1時間かけて行っていた。基礎的な体力・走力を平日の夜間練習で徹底的に鍛えているのが特徴の1つだ。

「走る量も多くしていますが、単調になりがちな体力作りも、リレーや綱引きなどを取り入れることで、楽しみながら取り組める工夫もしています」と代表兼監督を務める野口孝之介さん。そう語る横で、率先してメニューの工夫の提案をコーチに行うなど、子どもたちが意欲的に取り組む姿が印象的だった。

 アサイキッズでは年間計画表を作成し、それぞれの強化期間に合わせて練習メニューを変更している。「計画は1年を5つのフェーズに分けて作っています。それぞれのフェースごとに重点を置く課題を設定し、その課題に合わせた練習を行っています」。

 例えば秋から年末にかけては「チーム改革・修正期間」、年明けは「量より質にこだわる期間」、全日本学童大会の県予選が近づく春先は「チームワーク醸成期間」……。低学年から高学年まで、各フェーズでの課題を意識して練習に取り組む姿勢を大切にしているという。

リレーや綱引きも練習メニューに取り入れている【写真:高橋幸司】
リレーや綱引きも練習メニューに取り入れている【写真:高橋幸司】

限られた空間で行うことで、効率的かつ意味を持たせた練習ができる

 病院の敷地内には昨年完成した屋内運動場はあるものの、普段の平日練習で使用する人工芝グラウンドは25メートル×40メートルの広さしかない。

 野口監督は「広いグラウンドだと、ボールが遠くまで転がっていってしまい、捕りに行くだけで時間がかかる。限られた時間で効率的に練習を行おうとすれば、このくらいの広さがちょうどいい」と前置きをしたうえで、「うちには“キャッチボールから始める”という概念はないんです」と話す。

 例えば、基礎体力メニュー後に4年生以下のメンバーが始めたのは、10分間、ランダウンプレーのように選手が入れ替わりながら走って投げ合うメニュー。スローイングとキャッチングを組み合わせることで時間をかけず効率的に行え、練習量も倍になる。

「圧倒的に捕る回数・投げる回数が増えますし、走りながら投げるので、むしろ効率の悪い動きや姿勢も矯正されます。実戦にも応用できる、いわばキャッチボールの“超効率バージョン”です。ドリルを組み合わせて1対1のキャッチボールをするチームもありますが、止まって投げ合う方が逆に動きが雑になる。レベルの高いキャッチボールは高校生でも難しいんです」

 ちなみに、受け手が「あー投げろ!」と声をかけたタイミングで相手は投げていたが、その掛け声は選手たちが実戦を想定して自発的に始めたものだそうだ。野球を始めたばかりの子でも、この“超効率キャッチボール”ならば2、3か月で先輩たちと同じように投げ合えるようになるという。こうしたメニューを10分ごとに変えていくことで、集中力が途切れない工夫もしている。

 平日練習の重要性について、野口監督はこう話す。

「週末の試合で走塁や守備でミスが出た場合、翌週に振り返ろうと思っても、1週間たつと子どもたちは記憶が薄れてしまっています。うちのチームは平日のうちに試合の振り返りができ、子どもたちの記憶や感覚が鮮明なうちに1つ1つのミスを修正することができます。これが、平日練習の大きな強みだと思っています」

“鉄は熱いうちに打て”というように、悔しい気持ちや“次こそは”という思いがあるうちに振り返ることで、子どもたちは修正したプレーをしっかり理解し、次に生かすことができるのだろう。

(石井愛子 / Aiko Ishii)

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