致命的な「送球イップス」はなぜ起きる? 指導法に問題も…悪投繰り返す“根本原因”

送球ミスに繋がる技術的な原因とは(写真はイメージ)
送球ミスに繋がる技術的な原因とは(写真はイメージ)

プロトレーナー・高島誠氏「イップスは余裕のある時に出る」…教えすぎも厳禁

 普段のキャッチボールでは思ったところに投げられるのに、実戦になると悪送球を繰り返す。「送球イップス」は、野球選手にとって致命的な問題だ。もちろん「悪送球したらどうしよう」といった心理面も少なからず影響するが、オリックスやMLBのナショナルズでトレーナーを務めた高島誠さんは、「技術的な問題の方が大きいです」と断言する。

 送球イップスで悩む選手に共通するのは、右投げであれば、送球方向に向かって左足が地面につく前の、右足に体重が残っている時点で早めにトップを作りたがる点。投げ急ぎがイップスを助長してしまうのだ。

「イップスが出る時は大体が余裕のある時です。ボールを捕ってすぐ投げなければいけない時などは、トップを作る余裕がないので、その方がスムーズに送球できる場合が多いです」

 特に内野手の場合。捕って余裕がある時、例えば速い打球を処理して、4、5歩ステップを踏んでもゆっくりアウトにできる時に、イップスが出やすいという。送球に自信がない選手ほど、早く投げる準備を整えたいがために、捕球後すぐにトップを作りたがる傾向にある。ただ、後ろ足に体重が乗っている時にトップを決めてしまうと、スローイングのタイミングがズレてしまう。

「トップは前足が地面についた時に作るものです。バッティングも前足が地面についた時にトップを作らないと、バットがスムーズに出てこない。それと同じで、スローイングも後ろ足に体重が残っている時に作ってしまうと、前足がついた時にはボールを投げようと手が出ていってしまうので、タイミングがおかしくなるんです。軸足に体重が残っている時にトップを作る投手はいません。むしろトップを作らないぐらいの意識の方が、良いボールがいくことが多いです」

Mac's Trainer Roomの高島誠氏【写真:伊藤賢汰】
Mac's Trainer Roomの高島誠氏【写真:伊藤賢汰】

監督や保護者の行き過ぎた指導も送球イップスの一因に

 指導者の“手垢のついた”教えもマイナスに作用する。高島さんは「うまくいかない選手にテンプレート通りの言葉を並べる指導者が多いです」と警鐘を鳴らす。

「トップを作るのが遅い、体が突っ込んでいる、開きが早い……。ミスをしたら気持ちの問題だとか、練習をしていない、直るまでやれとか言われるじゃないですか。気持ちの問題ではなく、物理的な問題なんです。指導者もしっかりと選手を見た上で的確なアドバイスを送れるように勉強していかないといけません」

 小・中学生の育成世代でも、送球イップスに悩む選手は多いと高島さんは言う。原因の1つに、監督や保護者の行き過ぎた指導がある。

「監督は本来であればチーム運営やマネジメントを考える立場ですが、教えたがる指導者が多いです。その子にとって絶対的な立場の人が教えてはダメなんです。お父さんがコーチというのも、子どもにとっては絶対的な存在なので、指導が合わないと感じてもなかなか口に出すことはできません。そういう立場の人の指導は成り立たないと思っています」

 DH専任ならいざ知らず、スローイングは野球をする上で必ずついて回る。高島さんは12月に開催される「投げ方改善4DAYS」に出演。投球・送球の悩みの解決策についても披露してくれる。

高島誠さんも登場…少年野球の投げ方指導に役立つ練習法を紹介!

 Full-Count、First-Pitchと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、12月1日から22日までの毎週月曜日、計4日間のオンラインイベント「投げ方改善4DAYS」を開催します。投球・送球フォームの癖の直し方、球速アップにつながる指導法、正しいキャッチボールなど、選手・指導者・保護者に向けて、小学生・中学生の各野球カテゴリーで豊富な実績を持つ指導者・トレーナー陣がアドバイスします。参加費は無料。出演者などの詳細は以下のページまで。

【投げ方改善4DAYS・詳細】

https://first-pitch.jp/article/well/20251126/13493/

【参加はTURNING POINTの無料登録から】

https://id.creative2.co.jp/entry

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

少年野球指導の「今」を知りたい 指導者や保護者に役立つ情報は「First-Pitch」へ

 球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。

■「First-Pitch」のURLはこちら
https://first-pitch.jp/

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY