子どもの成長に不可欠な“経験” 全国初勝利ならずも…四国の硬式チームが貫く育成方針

初の全国大会に出場した松山ボーイズ・河原佑輔監督が大切にする「選手育成」
全国大会の大舞台でも、選手の将来を最優先に戦った。11月に滋賀で行われた、硬式少年野球5リーグに所属する小学6年生以下の選手を対象にした「MLB CUP 2025」ファイナルラウンドに出場した愛媛・松山ボーイズ。決勝トーナメントには進出できなかったが、河原佑輔監督は「中学でも大人になってからでも何年後かでもいい。糧になってくれれば一番」と充実した表情だった。
松山ボーイズは愛媛県松山市を拠点に1984年から活動しているチームで、今大会では中四国予選を勝ち抜き、初の全国大会出場を果たした。予選ブロックで敗退したが、2試合目の兵庫リトル戦では5点を追う4回に7安打を集中して6点を奪い、一時は逆転する粘り強さを見せた。
この試合で先発マウンドを託されたのが、チーム唯一の女子選手だった西岡莉愛(6年)。1回を4安打5失点で降板したが、強打を誇る兵庫リトルを相手に臆することなく腕を振った。予選で登板のなかった西岡の起用理由を、河原監督は「調子は良かったので。投げたい意欲は誰よりも持っていますし、今までそういった試合で投げることもできなかった。いい経験になると思いました」と説明した。
小学生は硬式、軟式問わず、体の大きい選手が有利になる傾向がある。誰もが「勝利と育成の両立」を目指してチームを指導しているが、簡単なことではない。「勝つことで得られることも大きいですが、少しでも成功体験や経験をしてもらうことで、野球を好きになってくれればいい」。河原監督はチーム全員で掴んだ初の全国大会を、選手たちの“経験の場”として戦った。

他団体との交流で得たもの「みんな主役であり、みんなが脇役」
「自分が好きなこと、得意なことを伸ばすということは今後の人生で大事になってくる。今回も試合では色んな6年生を主に使ってみましたけど、みんな主役であり、みんなが脇役。今後もう1段階、2段階でも成長してもらえたらいいなと思ってます」
河原監督の指導方針は「中学、高校に繋がる育成」。チームは基本的に土日の半日練習のみだが、小学生で硬式球を扱うため、投げ方や打ち方など基本を疎かにせず、怪我をしない体作りを大切にしている。他団体との交流を深めた今大会は、チームにとっても指導者にとっても大きな価値があったという。
「たくさんの選手と出会ったことで、どこかでまた高校生であったり、社会人で会うこともあると思う。こういった大会をしていただけることは素晴らしいことだと思いますし、今後も続けてもらえたら嬉しい。子どもの成長、野球人口の増加にも繋がるのではないでしょうか」
技術や理論を学ぶことは大事だが、小学生にはそれ以上に必要なものもある。普段は得られない“大きな経験”を積んだ子どもたちが、次なるステージで羽ばたくことを指揮官は願っている。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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