“男社会”では「野球人口は増えない」 環境厳しい女子中学生へ…宮本慎也氏が大会を開くワケ

宮本慎也杯で準優勝した登戸ユニオンズの臼井理菜子【写真:尾辻剛】
宮本慎也杯で準優勝した登戸ユニオンズの臼井理菜子【写真:尾辻剛】

元ヤクルト・宮本慎也氏は学童大会に加え、中学女子軟式大会も開催する

 学童だけでなく、女子野球の発展にも尽力している。「アルパインプレゼンツ 第10回宮本慎也杯 学童軟式野球大会」の3位決定戦と決勝戦が11月22日、東京都大田区の大田スタジアムで開催された。128チームが参加した同大会が節目の10年目を迎えた一方で、同じ冠名の女子野球の大会がある。大会長で元ヤクルトの宮本慎也氏が、「アルパインプレゼンツ 宮本慎也杯 女子中学軟式野球大会」開催の意義を説明した。

「女子野球の人口は増えています。でも、中学生は野球をする環境が難しく、大会も少ない。そういう話を聞いていて、女子中学生の大会をやりたいという提案を指導者の方から受けたんです。プレーする場所があればいいなと思いました」

 2022年に第1回大会を開催。第4回を迎えた今年は8月9、10日の2日間、16チームが参加して熱戦が繰り広げられた。会場は全国高校女子硬式野球選抜大会が行われ、「女子野球の聖地」と言われる埼玉県加須市。決勝戦では愛知の東山スマイルガールズがオール栃木を4-1で下して初優勝を飾った。

 4会場で行われた同大会。宮本氏は車で各会場を回り続けたという。真剣勝負が展開され「負けて泣いている姿を見たら、こちらも泣きそうになりました」と振り返る。「勝っても負けても泣いてる。オープン戦感覚ではない。それぐらい真剣に大会に懸けているので、ありがたい話です」と目を細めた。

選手にメダルを授与する宮本慎也氏【写真:尾辻剛】
選手にメダルを授与する宮本慎也氏【写真:尾辻剛】

女子中学野球は「まだ環境が整備されていません」

 野球界全体の発展に、女子野球の充実は欠かせない。「野球は男の社会でどうこうだとやっているようでは、野球人口は増えません。僕は何十年も前から選手会に言っています。ファンも含めて、女性を大事にしないといけません」。

 学童野球大会を開催して気づいたこともある。多くのチームに女子選手が在籍。「いろんなチームに何人も女子選手がいる。でも、その子たちが中学に進学した時に所属できる女子チームがなかったり、まだ環境が整備されていません。硬式なのか軟式なのか、次はどうするのか悩む子は多いと思います」。実際、学童の宮本慎也杯で準優勝に輝いた登戸ユニオンズでは、5番打者の臼井理菜子内野手ら2人の女子選手がレギュラーとして活躍していた。

 女子チームを立ち上げるのは簡単ではない。そこで、既に存在する女子チームが参加できる大会創設を考えたのである。「本当は(グラウンドサイズや投捕間、塁間など)もう少し短い距離でやった方が高いレベルでやれるとも思いますけど、日本だけでやっても世界に行った時に大変。世界的に見ると男子と同じ距離でやっているので、女子専用の球場ができるといいですね」と期待する。

 女子中学生の宮本杯ではリエントリー(再出場)や、投手も指名打者も打席に入れる10人打線制度の特別指名打者(EDH)も導入。「できるだけ多くの選手に試合に出てほしい」と話し、「大会があることでモチベーションが上がってくれればいいかなと思います」と続けた。少しでも女子野球の環境を充実させたい――。野球界の発展へ、広い視野を持って取り組みを続けていく。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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