終日練習なし、短時間集中で「家族も大事に」　日本一復活へこだわった“基礎の反復”

くら寿司トーナメントで初優勝、福島・常磐軟式野球スポーツ少年団

　短時間で集中して取り組んだ基礎の反復練習が結実した。全国1750の学童野球チームが頂点を争う「第6回くら寿司・トーナメント2025　第19回学童軟式野球全国大会ポップアスリートカップ星野仙一旗争奪」（くら寿司トーナメントポップアスリートカップ2025、NPO法人 全国学童野球振興協会主催）は7日、東京・神宮球場でファイナルトーナメントの準決勝と決勝が行われた。決勝戦は東北第一代表の常磐軟式野球スポーツ少年団（福島）が4-3で名古屋ドジャース（愛知）を下して初優勝を飾った。

　初回に2ランスクイズを含む2つのスクイズを決めて4点を先行。1点差まで詰め寄られながら最後まで主導権を渡さなかった天井正之監督は「初回にいいところが出てくれた。そのままの勢いでいけるかと思っていたけど、やっぱり全国大会の決勝は楽じゃない。勝ち切れて良かったです」と激戦を振り返った。

　2020年以来5年ぶり2度目の出場で日本一。前回は新型コロナの感染拡大で開催されなかった経緯があり「前回は組み合わせまで決まっていたけど中止になった。実質、初出場のようなもの。なかなか全国の舞台で勝てていなかったので、最高の気分です。来年の出場権も得られてうれしいです」と笑みを浮かべた。

　2010年に“小学生の甲子園”「全日本学童大会マクドナルド・トーナメント」を制するなど全国大会出場が豊富な強豪は、練習で特別な工夫はしていないという。平日は月曜日が休み。それ以外は夕方から2時間半、週末は試合がなければ午前中だけ練習を行う。「短時間で集中してやりたい。短い時間でも全力でやれば、結構疲れるものです」。

　終日練習は、まだ体が出来上がっていない小学生には負担が大きい。送迎する保護者にも負担をかけることになり「野球以外にも家族の時間を大事にしてほしい」という狙いもある。

思わず漏らした「不安です」…ベンチ入りメンバー12人での頂点

　内容も変わった動きはしない。天井監督は「コツコツやっているだけです。短時間で基礎練習を繰り返します。子どもですから、基礎を覚えることが一番大事です」と説明。ランニング、キャッチボール、バント、トス打撃、ノックを入念に行い、基礎練習が8〜9割を占める。「基礎を覚えれば、自然と応用に変わっていきます」。エンドランやプッシュバントなど自主的にやり始める選手もいる。

　ランニングで真っすぐに強く腕を振ることも意識させており「毎日毎日、地道に続けています」と語る。気持ちや動きが単調にならないように「スタッフで指導項目に共通理解を持ってやっています。毎日おざなりにならないように気をつけています」という。

　その積み重ねが今大会の進撃につながった。準決勝では今夏のマクドナルド・トーナメントで史上最多8度目の優勝を果たした長曽根ストロングス（大阪）と延長8回まで0-0。9回は2点差を追いつき、10回も先に1点を勝ち越されながら、逆転サヨナラで死闘を制した。

　現在のメンバーでは最後の大会。最高のフィナーレとなったが「やっぱり一番の不安は野球をやる子どもが少ないこと。心配です」と自ら切り出した。常磐の今大会のベンチ入りメンバーは12人で、球数制限もあって起用のやりくりも大変な部分がある。

　大会運営サイドは決勝戦の試合前にはグラウンドを開放して親子でキャッチボールする企画を実施。記念撮影もOKで、多くの親子が楽しい時間を過ごした。「野球を好きになるきっかけになる。ここで楽しんだ子どもたちが、次は友人を誘うこともある。こういうことは大事にしたい」と天井監督。勝利だけでなく、少年野球の未来にも目を向ける。日本一チームは練習も、運営も、地道にコツコツと続けていく。

（尾辻剛 / Go Otsuji）