積極的ミスは「成功に向かっている」　筒香兄が提言…子どもの“意欲”を潰さない育成術

筒香の兄・裕史さんが語る…子どもたちの成長促す育成方針

　野球を始めた子どもたちの未来を潰さない育成法として、失敗に対する考え方を変えることが重要だ。DeNA・筒香嘉智外野手が故郷の和歌山県に設立した少年硬式野球チーム「和歌山橋本Atta boys（アラボーイズ）」で代表を務める兄・裕史さんは「やっての失敗は成功に向かっているから失敗ではない」と語る。

　多くの子どもたちは難しい技術に挑戦する前に、「無理」「できない」などと言ってしまいがち。自然な反応にも思えるが、こうした言葉が技術習得の壁になっている側面もある。練習では何に取り組むかより、姿勢が重要になる。「できない」と言ってチャレンジしないことはダメだが、挑戦しての失敗は「成長の証」と理解することが大事だ。

　こうした環境づくりが、子どもたちの技術向上の土台となる。裕史さんは「チャレンジしてミスしても別に失敗ではない。次に頑張ればいいと本当に思えるようになってくる」と力を込める。結果、子どもたちは限界を作らず挑戦する意欲を持つようになるという。

　技術上達には、個性を大切にする視点も不可欠。アラボーイズでは「一人ひとりが自分の野球を楽しめる」環境作りを大切にしている。投げるのが得意な子、打つのが得意な子……。それぞれの長所を伸ばすことが指導者の役割になる。

　勝つことも大切だが、まずは人間的成長を促し、野球の楽しさを体感してもらうことを優先している。「全国大会にはもちろん出たいですけど、そこを目指すのではなく、きちんとした大人になるために」という視点を重視する。この順番を間違えないことで、子どもたちは野球を通じて挑戦することの大切さを学べるのだ。

　日本の野球の良さも取り入れつつ、新しい育成法を模索する姿勢も参考になるだろう。日本の野球には勤勉さや気配りなど優れた部分がある。こうしたことを大切にしながら失敗を恐れない挑戦的な姿勢を育むことが、子どもたちの可能性を広げることになるはずだ。

（First-Pitch編集部）