学童から中学野球へ…避けられない“壁” 多彩な変化球より投手が習得すべき能力とは

プロの真似は時期尚早…中学生投手が優先すべき“2〜3球種”での制球力
中学生の投手が身につけるべき最も重要な技術は何だろうか。ロッテや巨人などで左腕投手として活躍し、中学硬式野球チーム「都筑ジャイアンツポニー」で会長を務める前田幸長氏は、何より「ストライクを取る能力」と語る。
小学生から中学生になると、バッテリー間の距離は16メートルから18.44メートルへと一気に遠くなる。「この距離感に対応しながら、自分の体の使い方でストライクゾーンにボールを投げ込む感覚を優先的に習得することが重要です」と解説する。そうした経験を積んで、ストライクゾーンに収める技術を磨くことが先決だ。
打者を打ち取るために様々な球種が毎年のように開発されるが、前田氏は「中学生投手の基本球種はストレート、カーブ、スライダーで十分」と指摘する。プロはカットボール、シンカー、チェンジアップ、フォークなど多彩な変化球を操るが、「中学生が全てを習得するのは現実的ではありません。仮に多くの球種を投げられたとしても、その後の成長段階で新たな引き出しがなくなってしまいます」と続ける。優先順位を考え、基本となる2〜3種類の球種をまずマスターし、投球術を磨いていくべきだという。
変化球を投げることが許される中学生になると、多くの子どもたちはプロの真似をして様々な球種を試したがる。しかし投手としての技術を伸ばすために重要なのは、何種類もの変化球を投げることではなく、少ない球種でもストライクゾーンに確実に投げ込める技術を習得すること。「2種類の球種でストライクが取れれば、試合は十分に組み立てられる」と力説する。
小学生から中学生へと成長する段階で、投手として優先すべきは無理に多くの変化球を覚えるよりも、ストレートと1〜2種類の変化球でゲームを作れる投手を目指すこと。そうした取り組みが、長い目で見た成長につながる。基礎となる能力が身についてこそ、将来的な技術の幅も広がっていく。
(First-Pitch編集部)
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