挫折のない子どもは「ちょっとしたことで折れる」 失敗を“強み”に変える大人の姿勢

3人の野球指導専門家が説く「継続と挫折」の効用
少年野球の現場で、多くの指導者や保護者が直面するのが選手たちの「練習の継続」と「挫折への対処」という課題だ。上達には地味な積み重ねが大切だが、モチベーション維持や失敗の捉え方に悩む声は少なくない。3人の専門家の視点から解決のヒントを探る。
・地味な練習が続かず、他人と比べてやる気を失ってしまうのはなぜか。
・子どもに失敗させたくない“親の先回り”が、なぜいけないのか。
・目標に届かなかった挫折経験を、どのようにしてプラスの価値に変えるか。
甲子園や米独立リーグでプレーし、現在は野球塾を運営する長坂秀樹さんは、地味な練習を続けるコツを「ウサギとカメ」に例えて説明している。「中学、高校、大学と指導者は変わり練習内容も変化するが、変わらないのは自分自身」と、カメのようにゴールだけを見て、「過去の自分」と比較することが大切だと説く。指導者や保護者に対しては、半年前や1年前の姿と比べて成長を褒めるよう提案。「他の上手い選手と比べて『何で、できないんだ』などと言われた選手は、モチベーションを失ってしまう」と、特に低学年にはハードルを下げてでも成功体験を味わわせる工夫が必要だと語っている。
逆に挫折体験をどう成長に繋げるかも重要だ。野球講演家の年中夢球さんは、失敗や敗北を単なる嫌な思い出で終わらせることなく、選手たちの思考を変える「挫折スイッチ」にする必要性を説く。親はつい心配をして、先回りしてアドバイスを送って失敗を回避させる「見張る」姿勢になってしまうが、「挫折経験を知らない子や挫折に気づかなかった子は、カラカラに乾いた木と一緒で、ちょっとしたことでポキリと折れてしまう」と指摘。まずは温かく「見守る」姿勢が子どもの自立と成長を促し、高校野球以降で必要とされる「心の強い選手」を育むことにつながると述べている。
元大阪桐蔭主将の野球指導者、廣畑実さんは、挫折には明確な原因があり、それを分析して言語化することが選手としての幅を広げることに繋がると語っている。自身は目標としていたプロ野球選手になれなかった挫折を味わい、理由の1つとして、現役時代に人のアドバイスを聞かず、技術の“引き出し”が少なかったことを反省。「もっと他の人の話に耳を傾けていたら、違う結果が出ていたかも」と、以降はハンマー投げなど他競技の動きも貪欲に学ぶようになり、指導者としての“成功”に繋げたという。失敗を悔やむだけでなく、その経験を糧にして新しい価値を生み出す姿勢が大切だと示唆している。
実績ある指導者の言葉は、技術論以上に「心の持ち方」において重要な指針となるだろう。挫折や停滞を否定せず、成長の機会と捉え直す視点を指導者も親も持つことが、選手の未来を切り拓く鍵になる。
・他人ではなく過去の選手自身と比較し、小さな成功体験を積み重ねて継続力を養う。
・失敗を「挫折スイッチ」と捉え、普段の生活から主体的に取り組む姿勢を育む。
・挫折の原因を冷静に分析し、他分野の知見も取り入れて独自の強みに変える。
(First-Pitch編集部)
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