圧倒的“経験不足”を痛感「活動を優先して」 道外遠征で激変…日本ハムJr.が施す大改革

14年ぶりの優勝を目指すファイターズジュニアナイン【写真:石川加奈子】
14年ぶりの優勝を目指すファイターズジュニアナイン【写真:石川加奈子】

2011年以来14年ぶりの優勝を目指す北海道日本ハムJr.

 逸材小学生が集って日本一を争う「NPBジュニアトーナメント KONAMI CUP 2025」が、12月26日から29日にかけて神宮球場と横浜スタジアムで行われる。昨年から取り組みを強化した北海道日本ハムファイターズジュニアは、2011年以来14年ぶりの優勝に向けて順調な調整を続けている。

 11月末には1泊2日の道外遠征を敢行した。初日に埼玉・ベルーナドームで西武ジュニアと戦い、翌日は千葉・ファイターズ鎌ヶ谷スタジアムで巨人ジュニア、DeNAジュニアと対戦した。初めて道外遠征した昨年は1分1敗だったが、今年は2勝1敗。大きな手応えをつかんだ一方で、DeNAジュニアに0-8と完敗し、悔しさも残った。

 2年連続でチームを率いる球団OBの吉田侑樹監督は「全国のレベルを知って、個々の意識が高くなりました」と昨年同様、遠征効果でチームが大きく変化することを期待している。

 この道外遠征に象徴されるように、ファイターズジュニアは昨年から大きく取り組みを変えた。屋外で野球ができない冬期間の大会開催というハンデを克服するため、活動期間を2か月間から4か月間に延長した。チームの参加条件に「ファイターズジュニアの活動を優先すること」と明記し、8月中旬から毎週末に活動。実戦を20試合以上重ねてきた。

 以前は自身の所属チームの活動と重なることも多く、選手が全員そろうのは12月に入ってから。練習試合を2、3試合こなしただけで大会に臨み、チームとしての経験が圧倒的に不足していた。3人体制だったスタッフも、運営全般も担う代表1人を加えた4人体制に拡充した。成果が実り、昨年は7年ぶりに予選を突破し、2014年以来の準優勝と躍進した。

吉田監督(右から2番目)らファイターズジュニア指導陣【写真:石川加奈子】
吉田監督(右から2番目)らファイターズジュニア指導陣【写真:石川加奈子】

選手に求めるのは“考える力”…リーダーとして活躍できる資質を育む

 改革の経緯について、大塚豊代表は「そこを目指して頑張っている子どもたちの思いに応えたいと、社内でジュニアトーナメントに対する立ち位置を見直しました」と語る。目標を「日本一」、目的を「リーダーとなる人材育成」と明確化。「選手には、応援されるチームを目指そうと話しています。野球がうまくても、学校生活でしっかりしていないと、応援されない」と私生活も含めて見本となるような選手育成を目指している。

 最近の学童選手の傾向について吉田監督は「言われたことをやるだけの子が多い」と見ている。その上で、ファイターズジュニアの選手に求めるのは考える力。「いろんな情報がある中で、実際に自分でやってみて、自分でやることを決めて、ブレずにやり続けることが大切。160キロを投げることはできなくても、意識を変えるだけなら小学生でもできます」と力を込める。

 野球の技術指導以外にも、ストレッチやトレーニング、睡眠、食事、用具などに関する講義も実施。この先のステージでもリーダーとして活躍できる資質を育む。「勝っても負けても、活動して良かったと思える期間にしたい」と大塚代表は話す。

 普及振興もテーマの1つだ。練習試合の相手は、広い北海道という土地柄を意識し、「帯広選抜」「檜山選抜」など地方の選抜チームとも対戦する。ユニークなのは、女子チームとの対戦も組んでいること。吉田監督は「女子野球はベンチワークや声出しがとても良い。技術だけではなく、チームワークも学んでもらいたい」と自チームの成長に欠かせない対戦相手と位置付けている。

 エスコンフィールドの開業も追い風になった。トップチームの秋季キャンプ見学日を設け、選手たちは激励に訪れた伊藤大海投手の話に目を輝かせた。今年から内野が人工芝に変わったことで、練習試合やイベントも実現。12月7日には「エスコンフィールド野球教室 by ファイターズJr.」を行った。選手が所属するチームの4、5年生を招いての野球教室は、シーズン中に主力選手をファイターズJr.の活動に快く送り出してくれた各チームへの感謝の思いも込めての開催で、約200人が楽しんだ。

 応援されるチームとしての責任感を持ちながら臨む大会。目指すのは、もちろん14年ぶりの日本一だ。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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