巨人Jr.に“選ばれる投手”の特徴 元守護神が断言「球速じゃない」…求める逆算練習

巨人ジュニア・西村健太朗監督(中央)【写真:高橋幸司】
巨人ジュニア・西村健太朗監督(中央)【写真:高橋幸司】

巨人ジュニア・西村健太朗監督が語る今年のチームと選考ポイント

 逸材小学生が集う大舞台で活躍するには、球の速さ以上に大切なことがある。26日に開幕する「NPBジュニアトーナメント KONAMI CUP 2025」に出場する、読売ジャイアンツジュニアを率いるのは、6年連続で指揮を執る西村健太朗監督。今年のチームの特徴と新たな取り組み、セレクションで重視したことを語ってもらった。

 12月中旬、神奈川県内のグラウンドで行われていたのはオイシックス新潟ジュニアとの合同練習。ライバルチームと交じった効果もあるだろうが、選手たちからは積極的に声が出て活気に溢れていた。「こちらが伝えたこともできるようになってきて、チームとして形になってきましたね」と指揮官は目を細める。

 毎年のように優勝候補に挙げられる巨人ジュニアだが、今年のチームも「投手陣が豊富で、センターラインを中心に守備も堅い。スタメンと途中出場の差もそこまで見られない。個々の能力も高い」と西村監督の期待度は高い。「GIANTS MIND ~勝利と人間性~」というスローガンを新たに掲げ、挨拶、道具の扱い、準備の大切さや、最後まで諦めない精神なども伝授。「野球では周りに応援されるチームになれるのも大事」と、将来を見据えた指導も行ってきた。

 2年連続の準優勝から一転、昨年は1勝1敗で予選トーナメント敗退。攻撃力に課題を残したことを踏まえ、例年に比べて練習日を増やした。ジュニアの活動期間は4か月ほどと短いため、練習試合など実戦に重きを置くチームも多いが、「やっぱり試合だけでは振る力がなかなかつかない。(練習日を)増やしたことで結果も出てきています」と手応えを掴んでいる。

 もう1つ新たな試みは、“異競技”からの学びだ。西村監督と同じ「85年会」のつながりを生かし、2008年の北京五輪リレー銀メダリスト・塚原直貴さんを招いての走り方教室を行った。「野球しかやってこなかった子たちでしょうから少しでも感じるものがあれば」。異なる刺激も受けながら、練習生を含む18人は順調に成長している。

「試合のための練習をしてほしい」と選手たちに助言する【写真:高橋幸司】
「試合のための練習をしてほしい」と選手たちに助言する【写真:高橋幸司】

昨年のオリックスJr.投手が好例「外の出し入れだけで抑えていた」

 改めて、自身6度目となる今年のセレクションで特に重視したことは何だったのか。そこには現役時代、球速140キロ台中盤ながら、抜群の制球力で先発から抑えまで務めた西村監督らしい視点がある。

「球が速い子はたくさんいましたけど、僕は速いだけではないと思っている。何キロ以上出せないといけない、ということもない。コントロールの精度や(ボールの)回転数などを見ました」

 例に挙げたのが、昨年大会でオリックスジュニアの“開幕投手”を務めた山西紅莉さん(現守口ボーイズ)。4回を投げ無四球無失点、53球中ボール球はわずか14で、3ボールが一度もないナイスピッチで勝利をもたらした。「彼女は外の出し入れだけで抑えていました。(活躍する投手は)スピードだけじゃないのはわかっている。それに今は成長期なので、活動期間中に自然に球速が伸びてくる子もいますから」。

 制球力は球速以上に、早いうちに磨くに越したことはない。西村監督が勧める練習は、タオルを使ったシャドーピッチング。試合同様にグラブをはめて、全身鏡の前でフォームを確認する。「僕の場合は左肩が開かないようにすることでしたが、人それぞれ体の使い方は違う。自分のチェックポイントを見つけてやるといいと思う」と説明してくれた。

 グラブをはめてのシャドーもしかり、西村監督は「試合のための練習をしてほしい」と小学生たちに求める。例えばブルペン投球も漠然と投げるのではなく、打者に立ってもらったり、捕手にサインを出してもらったり、走者を想定したり。本番から“逆算”をすれば、常に1歩先の行動につながり、視野も広がってくる。

 西村監督は来季、3軍投手コーチに就任するため今大会がジュニア指導の“集大成”となる。「悔いのないように1日1日を過ごし、やってきたことをそのまま発揮してほしい」。2014年以来4度目のVへ、まずは初日の“GT戦”にチーム一丸で挑む。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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