野球離れをどう止める? “手取り足取り”は「面倒」…不毛の地に学ぶ普及の順序

子どもたちを指導する高知ファイティングドックスのサンフォ・ラシイナ【写真:喜岡桜】
子どもたちを指導する高知ファイティングドックスのサンフォ・ラシイナ【写真:喜岡桜】

西アフリカ・ブルキナファソ出身の独立リーガーが語る…野球普及へのヒント

 道具と場所さえあれば、子どもたちは野球を好きになれる。高知県高校野球連盟による、未就学児童から小学3年生までを対象とした「第2回 キッズ・ベースボールフェスタin高知」が2025年12月14日、春野総合運動公園で開かれた。「僕が野球を始めたときとは全く違いますよ」と穏やかに語るのは、元阪神の江越大賀氏(同球団アカデミーコーチ)とともに講師を務めた、高知ファイティングドッグスのサンフォ・ラシイナ外野手。少年時代の体験をもとに、野球離れが叫ばれる日本での普及のヒントを語ってもらった。

 西アフリカにあるブルキナファソ出身のサンフォは、2013年に15歳で来日。同球団の練習生を経て、2015年にプロ野球選手の夢を叶えた。生まれ持った身体能力の高さに加えて技術も磨き、2020年にはリーグ最多打点のタイトルと外野手部門でベストナインを受賞。翌年も連続でベストナインに選出され、NPBのスカウトにも注目された。在籍11年でキャプテンを3度務め、28歳になったばかりの同球団の看板選手だ。

 人口2300万人余りのブルキナファソで、野球は“知る人ぞ知る”スポーツ。国民的スポーツといえばサッカーだ。しかし、10歳の時にボールを蹴る以外の楽しさを知った。「僕の家の隣に、外国から人が来たので『行ってみよう』と友達と訪ねたんです。するとドアを開けてくれて、『実はこんなものを持ってきたんだけど遊んでみない?』みたいな感じで、野球の道具を紹介してくれました」。

 その隣人とは、JICA青年海外協力隊員で当時17歳の出合祐太氏(北海道ベースボールリーグ発起人)。硬式ボール、グラブ、金属バットが用意され、「最初はただのボール投げをしましたね」。出合氏のデモンストレーションのあとに、真似をしてボールを投げた。うまくなると他の道具も使うようになり、サンフォ少年だけでなく弟や、近所の子どもたちが次々に仲間を呼び、未知のスポーツやりたさに広場へ集まってくるようになった。

初心者への指導は「単純な目的」も大切だと語る【写真:喜岡桜】
初心者への指導は「単純な目的」も大切だと語る【写真:喜岡桜】

ルールは分かる子から教わる…走者の隣を「こっちこっち!」と伴走

 参加者が12~13人に達したところで、出合氏からルールの説明を初めて受けた。ベースを順番に走っていけば得点できることを教えてもらい、出合氏が投げたボールをバットで打ち返した。

「日本の子どもたちと一緒で、最初は、間違えていきなり二塁へ走ったり、早く点を入れたいから一塁から三塁へ走ったり、そういうのは僕たちにもありました。先にルールが分かるようになった子が『そこじゃない!』『こっちこっち!』『まだ止まるな、走れ!』と教えるんですよ。走者1人の隣を、いつも3人くらいが一緒に走って(教え合って)いるような、そんな状態でしたね」

 友人同士で、投げる距離や打球の飛距離を競い合ったり、ゲームではどうすれば、ピッチャー役の出合氏からたくさん点を取れるか教え合ったり。それがサンフォ少年にとって「夢中」になるほど楽しかったという。

 日本の野球普及イベントでは、はじめからゲーム形式を行い、大人が最低限のルールを説明したり、ルールが分からず困っている子をサポートしたりすることがある。ただ、サンフォは「子どもは自由に投げて、飛ばして、走り回るのが好きじゃないですか」と語る。

「初心者にとって、最初からルールを教えられると、面倒くさいと感じることもある。ルールは関係なく、ボールを遠くに投げる、遠くに飛ばすという“単純な目的”ができたから、あのころの僕は野球をすごく楽しいと感じたんだと思います」

 まずは純粋に、道具を使って投げる・打つというシンプルなところから始める。そこからゲーム形式へ移行し、大人が教え込むのではなく、子どもたち同士でルールを教え合える環境を作る。そうして心に火を灯してあげることが、普及につながっていくのではないか。実際にブルキナファソの球児たちは野球に熱中し、東京五輪出場をかけた2019年西アフリカ予選を1位通過。大陸予選で敗れたが、サンフォを軸に躍進した。旧友たちと臨んだ試合は格別に楽しく、あっという間だったという。まるで野球と出会ったころのように。

 現在、ブルキナファソは情勢悪化のため青年海外協力隊員の派遣がストップしており、地元の人たちが力を合わせ、野球の息吹を絶やさないよう指導しているのが現状だ。サンフォは、約1万3000キロ離れた日本でプレーを続けることで、母国の子どもたちへ野球という選択肢があることを伝えていくつもりだ。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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