小学生に“思い出代打”は「得るものがない」 全員100打席がノルマ…強豪学童の大胆起用

今津ファイターズ・羽渕繁監督が取り入れる「年間100打席以上」
試合の“経験値”を上げることで、子どもたちは一気に成長していく。兵庫・西宮市を拠点とする学童野球チーム「今津ファイターズ」は、2022年に「全日本都市対抗少年野球」で準優勝を果たすなど関西屈指の強豪チームとして知られている。羽渕繁監督は「6年生は必ず年間100打席以上を立たせる」とレギュラー、補欠の区別なく試合経験を積ませることを心掛けている。
羽渕監督は2007年に息子がチームに入部したことをきっかけに指導者となり、2017年に監督に就任した。監督3年目には公式戦で優勝を果たしたが、物足りなさを感じていた。子どもたちが中学、高校、大学と長く野球を続けるためには何が必要なのか。技術はもちろんだが、試合で活躍できる“成功体験”を一番に考えるようになったという。
「西宮市も野球は盛んですが、全国を見れば素晴らしいチームは沢山あります。強豪と呼ばれるチームと試合をやることで力の差が分かり、自分たちに何が足りないのかを理解する。当初は70~80試合でしたが、今は年平均120試合を組むようになりました」
春先はフォーメーションなど戦術的な練習を行うが、以降は練習試合や公式戦がメインだ。1日2試合は当たり前で、全学年の選手は最低でも1打席は立ち、実戦経験を積む。特に最上級生の6年生は年間100打席をノルマとし、実力的には劣る控え選手でも先発メンバーとして起用していく。そのなかでも、羽渕監督が重視しているのは「勝ちゲーム」を経験させることだ。

思い切った投手起用で肩肘の負担を軽減「全員にチャンスがある」
「負けている試合に使うのは簡単です。勝ちゲームで全員出してあげることに意味があると思っています。高校野球でよくある大差での“思い出代打”は、小学生で得るものはほとんどありません。リードしている状況で試合に出て、どうやって試合の最後を締めるのか。1つ勝つことの難しさを知ってほしい。だから、試合数は多くなりますね」
試合数が多くなれば、投手の数も必要になる。選手の故障防止のため、指導者は球数制限や連投禁止などに最大限配慮しなければならない。今津ファイターズは思い切った投手起用で、選手の体を守っている。
「私の考えですが、少年野球のレベルなら投手は全員にチャンスがある。コントロールが良ければ、どんどんマウンドに行かせています。普段のキャッチボールを大切にして、全員が内野ノックを受けて送球の安定感を高めていく。安定して相手の胸に投げられる子は、試合を作ることができています」
場数を踏むことで、実戦で力を発揮する子どもたちは圧倒的に増えてきた。自チームのグラウンドや試合会場には、数多くの中学強豪クラブチームの指導者が訪れるという。「子どもたちが評価されるのはありがたいこと。いい形で中学に送り出すことが指導者の役目だと思っています」。羽渕監督はこれからも、試合でしか得られない“経験”を子どもたちに積ませていく。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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