技術より先に「バットを扱えないと」 低反発でもアーチ量産…選抜V候補の“大胆決断”

明治神宮大会で本塁打を放った神戸国際大付高・田中翔麻【写真:加治屋友輝】
明治神宮大会で本塁打を放った神戸国際大付高・田中翔麻【写真:加治屋友輝】

昨秋の明治神宮大会で準優勝…今春の選抜でV候補に挙がる兵庫・神戸国際大付

 兵庫の強豪・神戸国際大付高は、2025年11月に行われた明治神宮大会で準優勝を飾った。自慢の長打力を発揮し、3試合で計5本塁打。出場が確実視されている今春の選抜大会では、優勝候補の一角に挙げられる。2024年に低反発バットが導入され、「スモールベースボール」に戻るとされていたが、青木尚龍監督は「やはり使い続けて慣れること。すぐに結果を欲しがるけれど、特効薬はない」と、わずか2年で“克服”できた理由を口にする。

 2024年の選抜大会から完全導入された低反発バット(新基準バット)。「飛ばない」「打球が弱い」と、多くのチームがスモールベースボールへ舵を切る中、昨秋の明治神宮大会で異彩を放ったのが神戸国際大付だった。中京大中京(愛知)との初戦で3本塁打を記録するなど、3戦5発。低反発バット導入前と変わらぬ強打を全国に印象づけた。なぜ飛ばないバットで長打を量産できたのか。指導の常識を覆す指揮官の大胆な決断が、背景にあった。

 新基準バットが導入された当初、青木監督も頭を抱えた一人だった。「打球を見た時には音も違うし、ミスショット時の力のない打球に『どうしたらいいもんかな』と戸惑いはありました」と振り返る。芯を外せば内野の頭すら越えない――。多くの高校が「芯で捉える技術を磨くため」木製バットによる練習を推奨する中、青木監督は真逆の指示を出した。

「もう木製バットはやめろ。こっちで用意するから、試合で使う新基準のバットで全員打ってくれ」

 高校球児のプレー期間は実質、2年半しかない。木製バットで技術を磨くことも大事だが、試合で使う新基準バット特有のバランスや、狭くなったスイートスポットに慣れる方が先決だと判断した。「振れないのに技術だけを気にしても意味がない」。近鉄、オリックス、ヤクルトでプレーした教え子の坂口智隆氏との会話で確信した「まずはバットを扱えないと打てない」という原点に立ち返り、導入当初から新基準バットを振り込ませた。

 チームは春夏連続出場した2021年を最後に甲子園から遠ざかっていたが、新基準バットが導入された2024年に入学した1年生は着実に力を付けていった。当初から「スモールベースボールは面白くない」と、打ち勝つ野球を目指していた指揮官の思いも実を結んだ。

打撃指導をする神戸国際大付高・青木尚龍監督【写真:橋本健吾】
打撃指導をする神戸国際大付高・青木尚龍監督【写真:橋本健吾】

青木監督のシンプルな考え「フェンス目がけて打てばいい」

 戦術面でも“逆転の発想”を取り入れた。打球が飛ばないなら単打狙いでバントなど繋ぐ野球が主流になりがちだが、青木監督は「低反発だから単打、バントというのも厳しい」と分析。飛ばないと思えば相手投手は強気に内角を攻め、外野手は極端に前進する。狭いエリアに敷かれた守備網の中で、ヒットを重ねるのは至難の業だ。

「内野は狭い中で4人守っている。外野は広い中で3人守っている。では、どこに打てば一番確率は高くなるのか」

 答えはシンプルだった。「フェンス目がけて打てばいい」。一塁に走者を置いて単打やバントなどで繋いでも、得点に結びつけるのはなかなか難しい。しかし、長打が飛び出せば、一塁走者が一気に生還できる。そのために必要なのは当てにいくのではなく、しっかり「振り切る」ことだ。神宮大会での本塁打もフェンスを目がけて振り切った結果、スタンドまで届いたものだという。

 とはいえ、やみくもに大振りしても長打は生まれない。選手は飛ばすためのスイング軌道、テークバック、タイミングを体に叩き込み、体の軸を重視したスイングを徹底した。「木製でも金属でも長い棒(バット)は必ず“しなる”ポイントがある。『こんちくしょう』ってやった昔ながらの上から叩きつけるスイングではダメなんですよ」。道具にいち早く適応し、フルスイングを貫く。神戸国際大付の強さは、飛ばない時代に「飛ばす意思」を持ったことにある。

※1月21日7時20分、記事のタイトルが誤って公開されました。お詫びして訂正いたします。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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