キャッチボールは練習開始から7時間後 創部4年で全国4度…中学強豪が重視する“順序”

創設4年で全国舞台に4度出場…長崎ポニーの“独特”練習メニュー
ポニーリーグの強豪が、合理的な練習でチーム強化を続けている。中学硬式野球の「長崎ポニーベースボールクラブ」は2022年4月に創設。間もなく、活動5年目に突入する。過去4年間で全国大会に4度出場し、最高成績は3位。一気にチームを強化した長崎県出身の松尾大吾監督が、独特の練習メニューの意図を説明した。
ウオーミングアップは夏場は1時間、冬場は1時間半以上かけてじっくり行う。理学療法士と話し合ったメニューはランニングと体幹強化が中心。「怪我をしない体作りを目的に、体幹トレーニングとストレッチを長めに取り入れています。他のチームより長く時間をかけてやっていると思います」。野球を楽しむ前提として、丈夫な体作りを目指している。
チーム発足前には長崎市などが取り組んでいた「野球肘撲滅プロジェクト」にも参加。自身も三菱重工長崎でプレーした社会人時代に右肘手術の経験があり、「そういうことは子どもに経験させたくない」と怪我防止への思いは人一倍強い。「野球で一番多い怪我は肘と肩。肘や肩を痛めると、やる気はあっても野球ができない状態になる。『何かおかしかったら、早めに言いなさい』と常々言っています」。
ウオーミングアップを終えると、多くのチームはキャッチボールへ移るが、長崎ポニーは全員で素振りを行う。基本的に全体練習は土日と祝日だけ。その午前中はほとんど球に触ることがない。「工夫というか、午前中に球を使わないきつい練習をします。午後からは球を使って実戦形式も入れたり、子どもたちが飽きないようにメニューを組んでいます」。午前中にハードな練習を消化し、午後は楽しみながら汗を流すのである。
素振りを終えると2組に分かれて、補食とフリー打撃へと進む。マシン打撃か、指導者が投手役を務めての打撃練習で、守っている選手は捕球する動きはあるものの、ここまで子どもたちが球を投げるシーンは一切ない。その後は打撃練習で使用したマシンを使ってバント練習と、内野ノック組に分かれる。内野ノックは近くのネットへの送球で、ここで初めて球を触ることになる。

「最後は『ああ楽しかった』で終わるように」
無駄のないメニューの流れを、松尾監督は「私の性格もあるのでしょうね。無駄な時間が大嫌いなんです。ボーッとしている時間が嫌いなので、グラウンドを空けないようにして常に何かをさせているんです」と説明。チーム全体での練習は土日と祝日に限られるだけに、合理的な練習メニューが必要であることを強調した。
午前8時30分開始の練習で、内野ノックで軽めの送球動作を行ったのが午後1時50分。5時間以上経過して選手たちは初めて球を握ったのである。指揮官が「凄く重要な練習」と位置付けるキャッチボールが始まったのは午後3時20分。日が傾きかけていたが、これも選手の体を思ってこそのメニューだった。
仮にウオーミングアップや素振り後にキャッチボールを入れてしまうと、すぐにシートノックを行わない限りは肩を温め直す必要が出てくる。「肩が温まって、一度冷えて、それから投げると故障につながります。現役の時は自分も嫌だったので、今の練習メニューにしています」。決してキャッチボールを軽視しているわけではなく、無駄を省いて効率的に行うとともに怪我防止の観点を意識した取り組みである。
最後に意識するのは気持ちよく終わること。「『ああ嫌だな』『練習に行きたくないな』という印象は与えたくない。最後は『ああ楽しかった』で終わるように心がけています」。午前中の球を使わないトレーニングから、午後の実戦に近い練習へ。その中で20球連続のトス打撃などでは競争も入れながら、楽しい雰囲気を演出する。合理的に考えられたメニューなのである。
(尾辻剛 / Go Otsuji)
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