“ダウンスイング”徹底は「試合で打つため」 中学強豪が実践…実際は「レベル」になるワケ

長崎ポニー・松尾大吾監督が推奨するダウンスイング…明かす実戦での効用
中学生はダウンスイングを心がけるべき――。中学硬式野球の「長崎ポニーベースボールクラブ」は、2022年4月にチームを創設。間もなく、活動5年目に突入する。過去4年間で全国大会に4度出場し、最高成績は3位。創設初年度から全国舞台に導いた長崎県出身の松尾大吾監督は、選手全員にダウンスイングを徹底させていることを明かした。
「一時はフライボール革命と言われていましたし、結構バットを下から出す子どもは多い。そのように指導している指導者もいますけど、ウチのチームに入ったら全員変えています。しっかりダウンスイングするように指導しています」
小学生の野球では投手の球速も遅く、打席では山なりに近い球が来る。上から落ちてくる球に対しては、バットが下から出る方が合わせやすく捉えやすい。上から叩く方が難しい。イメージはテニスの返球と同じ。上から落ちてくる球に対して、ラケットは平行もしくは下から出す方が捉えやすいのは明白だ。
「小学生がバットを下から出すのは分かります。でも中学生で130キロ近い球になってくると、それが通用しなくなります。さらにレベルが高い高校に行ったら、全く当たらなくなると思っています。どうしても体のつくり的にダウンスイングが合わない子どももいる場合は、その子に合ったスイングにしますが、基本的には高校や大学で通用するスイングができるように心がけています」
実際にフリー打撃でカーブを打たせると、バットが下から出てしまう選手が何人かいるという。それだと上から曲がり落ちてくるカーブには対応できても、球速のある直球や、横滑りするスライダーなどの変化球には空振りを繰り返してしまう。実際に体験させ、ダウンスイングの必要性を理解させている。
ダウンスイングを推奨する理由がもう1つある。打者はどうしても実戦では力が入ってしまう。力みの影響で、トップの位置から始動時にグリップが数センチ下がる選手が多いという。下がった位置からだとダウンスイングをイメージして振るとレベルスイングになる。それが真の狙いだった。

上半身の意識は「1%」…下半身主導のスイング指導を徹底するワケ
投手の球が浮き上がることはない。球の回転数やキレなどで伸びるように見えても、それは目の錯覚で「球がホップするのは170キロ以上と言われている」という。「速い投手は150キロ、最近だと160キロですけどホップはしない。目の錯覚でホップに見えているだけ。脳と目の誤差を修正しないといけません」。
伸びて見えるような球に対しては、バットが球の下を振ってしまい空振りするケースが多くなる。対応するためにダウンスイングで球の上を叩く意識で臨み、誤差を修正していくのである。最終的には、どんな球も打ち返すのが目標。「練習でダウンスイングをして、実戦で緊張して力が入った中でレベルスイングをして打てるというのを心がけています」と力を込めた。
スイングする際に意識させるのは下半身。「上半身の意識は1%。下半身で振りなさいと言っています」。バットがスムーズに出てくれば、ミート率が上がる可能性が高くなる。そのためには少しでも力みを減らす必要がある。
飛距離を伸ばすには下半身の力が重要となる。「サッカーボールを遠くに飛ばす場合、投げるか蹴るかとなると、みんな蹴ります。『じゃあ、なんでや』と聞くと『下半身の方が太いし、力があるからです』と答える。『それなら野球も同じ。下半身で打たないといけないよな』と言っています」。他競技も例に出しながら、理屈を分かりやすく伝えている。
実戦で力んでしまうのは仕方がないこと。それを見越した上でのダウンスイング推奨であり、下半身主導でのスイング指導なのである。
(尾辻剛 / Go Otsuji)
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