熱中症リスクの高い“2つの守備位置” 2027年から兼任禁止…学童野球が直面する現実

熱中症リスクの高い2つのポジションとは(写真はイメージ)
熱中症リスクの高い2つのポジションとは(写真はイメージ)

「野球指導者講習会」で紹介された熱中症対策の最新知識

 年々猛暑日が増えている酷暑の時代、指導者は夏本番前から子どもの熱中症対策に万全を期しておきたい。中でも、野球においては特に注意すべきポジションがあるという。全日本野球協会が主催する「野球指導者講習会」(Baseball Coaching Clinic)が1月24日、25日に東京都内で行われ、初日に「暑熱対策」に関するパネルディスカッションを開催。学童野球での指導も行う国際武道大学体育学部の笠原政志教授ら専門家が、最新の知見を披露した。

 全国の指導者や、指導に興味を持つ人を対象に毎年開催されている「野球指導者講習会」。パネルディスカッションには笠原教授のほか、日本スポーツ協会(JSPO)スポーツ科学研究室の青野博室長、今春の選抜高校野球大会に出場する埼玉・花咲徳栄高の岩井隆監督がパネリストとして登壇。160人の参加者と質疑応答を交わすなど熱気に包まれた。

 深部体温は通常37度前後だが、39度以上になると高熱状態、40度を超えると頭痛や倦怠感などが表れる熱疲労状態となり、40.5度を超えると中枢神経へ異常をきたしてくる。熱中症対策の前提として、「39度以上に行かせないようにすることが重要」と笠原教授。では実際、夏場の試合中にどれだけ上昇するものなのか、昨年プロ野球の協力を得て、投手・捕手・一塁手、中堅手に計測カプセルを飲んでもらい数値を測ったという。

 すると、気温35〜38度、WBGT(暑さ指数)32度の環境下で、平時よりも大幅に上昇したのは投手と捕手だった。投手については39度のラインを超えた。昨年6月、西武の今井達也投手(現アストロズ)が熱中症の症状で緊急降板する出来事があったが、運動量が多くプレッシャーにさらされる投手、プロテクターを着用する捕手は、やはり高リスクのポジションであることが証明された。

 笠原教授は少年野球の試合でも計測を行ったといい、打者一巡で守備の時間が長くなった際、やはり深部体温が39度を超えた選手がいたという。「特に上がるのはピッチャーとキャッチャーで間違いない。どのタイミングでブレークを取るかなど、審判も含めて非常に難しい、大事な判断になる」と語った。

野球指導者講習会のパネルディスカッションの様子【写真:高橋幸司】
野球指導者講習会のパネルディスカッションの様子【写真:高橋幸司】

熱中症予防には「体調管理、栄養、休養が大事」

 熱中症対策には何より、体内に熱を溜めないことが重要だ。会場では、JSPOのホームページやパンフレットにも紹介されている、血液を効率的に冷やす「手のひら冷却」(手掌冷却)や「アイススラリー」の摂取など、体の内外から冷やす対策法が紹介されたが、笠原教授は前提として「体調管理、栄養、休養が非常に大事だと思います」と語った。

 例えば朝食をとらずにエネルギー不足だと、脳の機能が低下し発汗機能が弱まる。運動後の水分補給を怠ると、血液がドロドロになり疲労物質を除去できない。睡眠不足だと交感神経が優位になり、脱水を促してしまう。そうした熱中症につながるリスクを排除するために、保護者の協力を得ながら「毎日の体調管理が大切になる」と説明した。

 JSPOの青野室長によれば、「子どもは体重当たりの体表面積が大人に比べて大きく、周りの環境が暑ければ体も熱くなりやすい。発汗機能も大人ほど発達していない」という。夏場に顔を真っ赤にしている子がよくいるのは、「頭部の皮膚血流量を上げて、なんとか熱を発散させるためで、汗を十分にかけているわけではない」のだそうだ。

 折しも全日本軟式野球連盟は、学童野球での同一試合での投手・捕手兼任を2027年シーズンから禁止することを発表したが、その2つのポジションには、肩肘への負担のみならず、夏場は命に関わる要因もあるといえる。「私も学童野球に関わっており、投げられる選手が限られている中で『(試合に)出したい』と思うこともあるが、そういうわけにはいかない。球数制限もある中で、考えなければいけない現実がある」と笠原教授。子どもが安全に野球をするためにも、大人にも最新の知識と意識が求められる。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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