野球は「断トツに熱中症の割合が高い」 議論を呼ぶ7回制…他競技と異なる“リスク要因”

2024年夏の甲子園に出場した花咲徳栄高ナイン【写真:加治屋友輝】
2024年夏の甲子園に出場した花咲徳栄高ナイン【写真:加治屋友輝】

「野球指導者講習会」で花咲徳栄・岩井隆監督が語った暑熱対策

 高校野球で7イニング制導入が検討されるなど、真夏の酷暑対策は野球界にとって喫緊の課題だ。かつてのスポーツ界には「運動中に水は飲むな」の理不尽な指導がはびこっていたが、「昔とは違うんだということを肝に銘じないと、指導者は(新しい)知識を得られない」と発言したのは、今春の選抜高校野球大会に出場する花咲徳栄高の岩井隆監督。1月24日、25日に東京都内で開催された「野球指導者講習会」(Baseball Coaching Clinic、全日本野球協会主催)で、熱中症リスクを高める野球の特性について語った。

 暑熱対策に関するディスカッションで、パネリストの1人として登壇した岩井監督は、全国から集まった160人の参加者に語りかけた。「野球は断トツに熱中症になる割合が高い。学校のグラウンドの隣で練習をしているサッカーやラグビーの、倍以上の確率で足をつったりすることが多い競技なんです」。

 他競技と比べてリスクが高い理由として、岩井監督が挙げたのが「競技時間の長さ」、そして「ユニホーム」だ。サッカーなどのような「半袖・短パンでやる競技とは違う」と岩井監督。熱中症対策には涼しい服装も鍵を握るが、野球の場合は安全面から、特に下半身はロングパンツとソックスで皮膚が覆われてしまう。

 そこで同校では、ウオーミングアップはユニホームではなく半袖・短パンOKにし、やり方も個人に任せるようにしたという。「高校野球はみんなで同じことをする、みんなでアップをするのがチームワークと教えるものですが、考え方を変えました」。

 それは、侍ジャパンU-18代表コーチとして国際大会で目の当たりにした光景も影響しているようだ。「他の国はみんな半袖・短パンでアップをしていました。台湾もフロリダも暑かったんですが、(U-18は)7回制だから(体力が)もったのかもしれない。高校野球の文化、日本野球の文化を変えていくことを、考えなきゃいけない時期に来たかなとは思います」と語った。

U-18代表コーチとして国際大会に参加した岩井氏(左から2人目)【写真:荒川祐史】
U-18代表コーチとして国際大会に参加した岩井氏(左から2人目)【写真:荒川祐史】

競技パフォーマンスを上げ、なおかつ健康を守るのが指導者の使命

 そのほか、暑熱順化の方法や“サマータイム”の導入、ノックの際にも近くに水分を置くようにするなどチームでの熱中症対策を語った岩井監督。高校野球で導入されている「クーリングタイム」については、「3回、5回とかではなくて時間で区切る。たとえば前半(の時間)が長くなったら2回で一度切るとか。その方が生徒の負担は少なくなると思います」と持論を述べ、参加した学童指導者に向けても、「年齢が下がれば下がるほど体力もないでしょうし、15分で1回休ませるといった工夫がこれからは必要」と続けた。

「水を飲むな」の時代を潜り抜けてきた指導者こそ、“過去の常識”が抜けきれず、時代の変化への認識が甘くなっている危険性は高い。「昔は(選手たちに)我慢させて根性を鍛えるのも目的だったかもしれないが、今は競技パフォーマンスを上げて、技術や体を作って、なおかつ健康を守る。それが私たち指導者の使命」と岩井監督。子どもたちの安心・安全と球界の未来のためにも、こうした講習会などを活用した大人の“知識のアップデート”は絶対不可欠といえるだろう。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

少年野球指導の「今」を知りたい 指導者や保護者に役立つ情報は「First-Pitch」へ

 球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。

■「First-Pitch」のURLはこちら
https://first-pitch.jp/

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY