球速アップへ、握力頼みは“効果半減” 肘肩鍛える「ゴムバンドトレ」が抱える問題点

ゴムバンドトレーニングを指導する様子【写真:編集部】
ゴムバンドトレーニングを指導する様子【写真:編集部】

投球動作のトレーニングにおける問題点

 肩の強化や故障予防を目的に、ゴムバンドを使った投球トレーニングは、今や当たり前のように行われている。手軽で場所も選ばない一方、その使い方が適切かどうかまで意識されているケースは多くない。実際には、肩を鍛えるはずのトレーニングが、別の部位に負担をかけてしまっている場面も見受けられる。本来狙うべき部位に刺激を届けるために、ゴムバンドの「使い方」そのものを見直す必要がありそうだ。

 ゴムバンドを使った投球動作のトレーニングは、現場でよく目にする光景だ。肩周りの安定性を高め、将来的な球速アップに備える目的で取り入れられている。一方で、実際の動きを見ていくと、気になる点もある。ゴムバンドを「握力で引っ張る」形になっている選手が少なくないことだ。

 その場合、鍛えたいはずの肩ではなく、前腕に力が集中しやすい。肘が固まり、投球動作とは異なる力の入り方になってしまうケースも見られる。トレーニングの意図と、実際の動作が噛み合っていない例と言える。

 特に小学生や中学生といった成長期の選手では、ゴムの強度設定が難しい。強すぎれば力任せになり、弱すぎれば負荷が足りない。結果として、指で強く握り込む形になりやすく、前腕主導の動きに陥ってしまうこともある。

 こうした点について、米国の野球トレーニング施設「ドライブライン」は問題意識を持っている。科学的なアプローチで知られる同施設では、ゴムバンドの使い方そのものを重視しているという。

 担当者は「指で握ってしまうことが、一番の問題です」と話す。「握力を使って引くと、肩のインナーマッスルや肩甲骨周りではなく、前腕に刺激が集中しやすくなります。そうなると、肘も固まりやすい」

市販のゴムバンドでは……“握らない工夫”が必要

 ドライブラインの施設では、手首にカフで固定するタイプのバンドを使用している。指で握らなくても引ける構造のため、前腕の関与を抑えながら動作を行えるのが特徴だ。「狙っている部位に刺激が入りやすい」と説明する。

 強度についても、立つ位置を変えることで調整できる設計になっている。固定点から距離を取れば負荷は増し、近づけば軽くなる。これにより、筋力の少ない小学校高学年や中学生でも、無理に引っ張ることなく、動作を確認しながらトレーニングができるという。

 ドライブラインでは、重さの異なるプライオボールも開発しており、正しい使用方法の重要性を強調している。ゴムバンドトレーニングについても同様で、基本ドリルと複数のバリエーションが用意され、トップ選手たちはそれに沿って取り組んでいる。

 市販のゴムバンドで代用できないかと尋ねると、「握ってしまえば、前腕に力が入るのは避けられません。手首を固定し、指先を解放できる構造が重要だと考えています」と答えた。

 手軽に始められるゴムバンドトレーニングだからこそ、動作の質が問われる。特に成長期の選手にとっては、方法ひとつで体への影響も変わってくる。見慣れたトレーニングだからこそ、その「やり方」に目を向ける必要がありそうだ。

(First-Pitch編集部)

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