今ならわかる助っ人の気持ち「何しに来たんや、と」 40歳で再認識した“野球の真髄”|荻野貴司のチェコ通信~Hra!~#9

ブルノにあるバーで店主のバイクを借りてちょっと息抜き【写真:本人提供】ブルノにあるバーで店主のバイクを借りてちょっと息抜き【写真:本人提供】

荻野貴司が届ける連載・第9回…納得のいかないシーズンで気づいたアレコレとは

 40歳にして新天地チェコでの挑戦に乗り出した荻野貴司外野手。強豪ドラツィ・ブルノの一員として、4月に開幕した国内リーグのエクストラリーガでプレーする日々は、真新しさと驚きに溢れていた。だが、時はあっという間に過ぎ、プレーオフを経て9月6日に閉幕を迎えた。

「荻野貴司のチェコ通信?Hra!(フラ!)?」第9回は、国内リーグ連覇を逃し、3位に終わったチームの様子、そしてチェコ野球に触れて得た気づきなど、楽しいだけではなかった今シーズンについて、荻野が率直な心の内を吐露する。

◇◇◇◇◇

日本の皆さん、こんにちは! 一足先にチェコ・エクストラリーガでは2026年シーズンが終了しました。僕たちドラツィはレギュラーシーズンで3位となり、27度目の優勝を目指してプレーオフに臨みましたが、準決勝で敗退。決定戦を経て、最終順位も3位となりました。

 国内最多26度の優勝を誇るドラツィにとって、3位という結果は納得のいかないもの。球団公式インスタグラムには、3位決定戦後に首に銅メダルをかけながらも硬い表情をした選手たちの様子が公開されていましたが、やはり優勝にこだわる気持ちは強いようで、終わった直後から「来年は絶対に金メダル(優勝)だぞ!」と早くも王座奪還に目を向けていました。

 準決勝では、同じブルノを本拠地とするフロシと対戦し、初戦に勝利したものの、そこから3連敗。フロシはシーズンを通して安定感のある戦いをしていましたが、投打ともに勢いがあった。さらに言えば、僕らドラツィはミスが目立ち、負けるべくして負けた感も否めません。野球とはミスした方が負けるスポーツ。そこはチェコでも日本でも変わらない基本だと感じています。

 イーグルス・プラハとの3位決定戦は、少し実力差もあったのでドラツィの2連勝で終えましたが、正直なところ、チーム全体としての士気は高くはありませんでした。準決勝で全てを使い果たしてしまったというか、優勝以外はすべて同じと考えているのか。ただ、シーズンの最後を勝利で締めくくるのと、負けて終わるのとでは全然違う。どんな形でも最後に勝てたのは良かったです。そして、僕個人の話もお伝えします。

 前回もお伝えした通り、外国人枠の都合上、準決勝も3位決定戦も第1戦は出場機会がありませんでした。準決勝の第3戦はベネズエラ人投手、ビジェガスの降板後に代打出場。ルール上、出場機会が限られることは分かっていたものの、十分に状態を上げられず、プレーオフは4試合出場で16打数4安打1打点。好機でも打てずに申し訳なさだけが残りました。

3位でシーズンを終えたがチーム内に残ったのは悔しさだった【写真:本人提供】3位でシーズンを終えたがチーム内に残ったのは悔しさだった【写真:本人提供】

ロッテ時代と変わらなかった「気持ちの部分」

 今季のエクストラリーガはこれで終了です。1月に縁あってドラツィと契約を結んでから、ここまで約8か月。言葉も文化も知らないチェコで家族のサポートを受けながら野球に取り組む日々は、本当に良い経験になりました。もちろん、チェコの野球はNPBのように高いレベルではないし、試合は週末に開催されるだけ。ロッテで過ごした16年とはまったく違う毎日が楽しくもあり、驚きでもありました。

 でも、野球をやっている時ってやっぱり打てないとなんか悔しいし、負けると悔しい。本当に楽しみながら野球をやったかというと、そこは勝負の世界。野球をプレーするということに関して、僕の気持ちの部分はロッテ時代とそれほど変わらなかったんです。

 試合をすれば、やっぱり純粋に勝ちたいし、勝った方がうれしい。打てればうれしいし、アウトになると悔しい。試合に負けて学ぶこともあるかもしれないけれど、やっぱり悔しさの方が強かった。どこで野球をすることになっても、この思いは変わらないということに気付きました。

 そう考えると、チームメートを見ても、対戦相手を見ても、やっぱりみんな喜んだり悔しがったりしている。技術的な違いはあるにせよ、選手が試合にかける思い、1球1球にかける思いは、日本とチェコとでそんなに大差はないのかもしれません。

 もう一つ、チェコで少し分かった気がしたのが、日本に助っ人として来ていた外国人選手の気持ちです。高額な契約を結びながらも活躍できずに帰っていく選手に対して、実は「あれ?」と思うこともありました。でも、今シーズンは自分が助っ人という立場になり、思うような結果を残すことができなかった。僕も「何しに来たんや」と思われていたのかもしれない。

 打率.298、12打点、3盗塁。助っ人としては物足りない成績ですし、自分でも納得はしていません。状態が上がらないままシーズンが終わってしまった事実もある。申し訳なさと不甲斐なさを感じる時、日本に来ていた助っ人外国人たちも、自分と同じようにプレッシャーや悔しさを感じながら過ごしていたのかな、と思ったのです。チェコで今までにない視点を数多く得ることができましたが、ちょっと気付くのが遅かったかもしれません(苦笑)。

助っ人外国人として得た新たな気づきも【写真:本人提供】助っ人外国人として得た新たな気づきも【写真:本人提供】

チェコで沸いた一つの疑問「何をモチベーションに…」

 今シーズンを通じて、これといった答えが見つからず、僕の中で気になっていたことがあります。それがチェコ人の選手は何を目指して、何をモチベーションとして野球をしているのだろうということです。

 日本のプロ野球であれば、やっぱり年俸アップがモチベーションの一つになります。試合に勝ってチームが優勝したり、前年より成績が上がったり、こうした評価が年俸に反映されますが、チェコにはそれがありません。プロ契約をしているのは外国人選手くらいで、チェコ人選手が野球で得る収入はごくわずか。だから、仕事や学校と掛け持つ人がほとんどです。

 平日は仕事や学校を終えた後のわずかな時間を練習に費やし、土日に試合。限られた時間にも野球をしようと思う、そのモチベーションは一体どこから湧き、何を目標としているのだろう? それが僕の率直な疑問でした。

 一度、ある選手に聞いてみたんです。彼の答えは「試合で活躍して、ナショナルチーム(代表チーム)に選ばれれば、いろいろな国に行って試合ができる」というもの。確かに、野球はチェコ以外の国や人と繋がるきっかけの一つにはなる。僕だって野球がなければチェコに来ることがなかったでしょう。

 まだ1人にしか聞いていないので、みんなの考えは分かりません。それでも、ナショナルチームに選ばれるということは、僕たちが考える以上に名誉で価値あることなのかもしれません。

今季最後にチャンス到来! BCLで目指す欧州王者【写真:本人提供】今季最後にチャンス到来! BCLで目指す欧州王者【写真:本人提供】

有終の美を飾るラストチャンス…BCLで目指す頂点

 さて、エクストラリーガは終了したものの、ドラツィの今季はまだ終了していません。9月26、27日にベースボール・チャンピオンズリーグ・ヨーロッパ(BCL)決勝トーナメントに出場するからです。5月末にドイツなどで開催されたグループステージを勝ち抜いたドラツィ・ブルノ(チェコ)、テネリフェ・マーリンズ(スペイン)、キュラソー・ネプチューンズ・ロッテルダム(オランダ)、1949パルマ・ベースボール・クラブA.S.D(イタリア)の4チームが、欧州の頂点を懸けて戦います。

 舞台となるのは、ここブルノ。なんと僕たちがホームアドバンテージを持って戦えることに。国内連覇は逃したものの、“地元”で再び優勝を目指せるのはうれしいことですね。5月のグループリーグと同じように、チェコ以外のヨーロッパ各国の野球が見られる貴重なチャンスでもあります。ここは気持ちを切り替えて、頂点を狙いたいと思います。

 僕たちがまず対戦するのは、オランダ代表のネプチューンズ。オランダは欧州の中では野球の盛んな国で、ネプチューンズは国内リーグの今季覇者ということもあり、決して簡単な相手ではありません。思い切ったプレーで流れを掴み、有終の美を飾って今季を締めくくりたいと思います。日本から熱い応援、宜しくお願いします!

【荻野貴司情報】
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