荻野貴司が届ける連載・第6回…約1か月の夏休みで広がった人生観
昨季までロッテで活躍した荻野貴司外野手がチェコ・エクストラリーガに移籍し、早くも4か月が経った。言葉も文化も違う異国で積極的にチームメートと交流を図り、日本では想像もつかなかったことに挑む日々。家族のサポートを得ながら第2の野球人生を楽しむスピードスターのリアルな声を「荻野貴司のチェコ通信〜Hra!(フラ!)〜」では届けている。
第6回は、プロ入り後初めて経験した約1か月の夏休みを振り返り、チームメートやU17女子バスケットボール日本代表チームとの交流など、チェコだからできた貴重な体験について語る。
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日本の皆さん、こんにちは! 日本では今年もかなりの猛暑だと聞きます。ここブルノは日中こそ30度近くになりますが、湿気のないカラッとした気候で朝晩は少し肌寒いくらい。とても快適な夏を過ごしています。
前回もお伝えした通り、チェコのエクストラリーガは6月末から7月16日まで約3週間の“小休止”。僕がプレーするドラツィ・ブルノはスケジュールの都合で6月14日から休みが始まったため、約4週間の夏休みとなりました。そこで今回は「荻野家の夏休みinチェコ」を皆さんにご紹介したいと思います。
荻野家はこの期間、チェコ国内を楽しみました。まず最初は、チームメートのマルティン・カラベク選手の実家を訪問。家族でワイナリーを経営していて、以前から「遊びにおいで」と誘われていたのです。僕たちが訪問した日は、ちょうど「ホディ」と呼ばれるお祭りの日。チェコの民族衣装を着た人たちが楽器を演奏しながら街中を練り歩き、手に持ったワインを村の人々に振る舞っていました。
ワイナリーに行ったのは、生まれて初めてのこと。一面に広がるブドウ畑、ワインを仕込む大きな樽など、目に映るすべてが新鮮でした。カラベクのお父さんが出迎えてくれたのですが、お父さんはチェコ語しか分からない。僕たちはチェコ語が分からないし、英語も片言。そこで英語もチェコ語も分かるカラベクが通訳をしてくれたのですが、コミュニケーションを図ろうと思えば何とかなるものですね。
そして肝心なカラベク家のワインの味ですが、いやぁ美味かった! 白ワインをメインに作っているようですが、赤ワイン、スパークリングなど色々な種類があって、ひたすら飲む、飲む、飲む(笑)。息子の飲んだブドウジュースもとても美味しくて、大満足のワイナリー訪問となりました。
その数日後には、キャプテンを務めるヤクブ・ハイトマール選手に誘われて、車で1時間半ほど離れたテルチという町に出掛けました。中世の街並みが残るテルチは世界遺産にもなっていて、ハイトマールにとって家族と何度も訪れているお気に入りの場所で、僕たち家族にぜひ紹介したかったそう。確かにカラフルな色合いの建物が並ぶザハリアーシュ広場やテルチ城などが印象的で、ブルノとはまた違った魅力を感じられる場所でした。
プラハまで2時間半のドライブ…家族で野球観戦をする貴重な機会に
そうそう、プラハにも行ってきました! 前回、石川(歩)と会うためにプラハに行った時は僕一人だったので電車を使いましたが、今回は家族旅行ということもあり、片道2時間半ほどかけてドライブに挑戦してみました。チェコでは車は左ハンドルで右側走行。日本とは逆なので、いつも乗り始めは少し緊張するという……(笑)。
チェコの高速道路はパッと見、一般道との違いが分かりません。日本では高速道路は一般道より高い位置を走っていますが、チェコでは一般道と同じ高さ。さらには、日本の高速ではおなじみの側壁もないため、運転しながら素晴らしい景色を楽しめます。そして気が付いたのは、チェコはとても自然豊かな国だということ。これまでどうしてもプラハに代表するような中世の城や聖堂、歴史的な街並みの印象が強かったのですが、一面に広がる畑や覆い茂る木々、悠然と流れる川などの風景がとてもきれいで感動しました。
さて、プラハで何をしたかというと、7月5日から4日間開催されたプラハ・ベースボール・ウィークを見に行ったのです。大会に参加するチェコ代表チームでコーチを務め、荻野家の引っ越しをサポートしてくれた田久保賢植さんが、その数日前にブルノに立ち寄ってくれたことがきっかけ。チェコ代表を応援に行こうとなり、一路、プラハへ車を走らせたのです。
球場ではオランダ対チェコ戦を観戦しましたが、欧州ではトップの実力を持つオランダはやはり強かった……。チェコは5回まで5失点で粘ったものの、結局4-15で完敗。残念でしたが、家族と一緒に野球観戦をする機会は滅多にないので貴重な経験となりました。
この日はプラハに1泊し、翌日には世界で最も美しい街の1つとされるチェスキークルムロフという街へ向かいました。実はこの街は、日本からの応援ツアー「おぎさんぽ in チェコ」でも参加者の皆さんと一緒に立ち寄る予定なので、その下見に行ったのです。プラハともブルノともまた違った魅力を持つ街で、ツアー参加者の皆さんと訪問するのがますます楽しみになりました。
のんびりとドライブしながらチェコの街や文化、歴史などに触れた2泊3日の旅は、想像以上に充実した時間となりました。運転に自信がついたこともあり、シーズンが終わったらヨーロッパを車で旅行するのもいいなぁと思い始めています。島国の日本では車で隣の国に行くなんて想像もつかないこと。チェコにいるからこそできる経験は積んでおきたいところです。
ブルノでまさかの「ファン体験」…高校生の姿に教わった本質
こんな偶然もありました。ブルノでは7月11日から「FIBA U17女子バスケットボールワールドカップ2026」が開催され、僕も14日の日本vsチェコ戦を応援に行ってきました。以前、千葉ジェッツの応援に行ったことはあるものの、バスケ観戦初心者の僕にとってはとにかく新鮮な体験でした。攻守交代がはっきりしている野球とは違い、バスケは刻一刻と攻守が入れ替わります。プレーはもちろん、試合そのもののスピード感が面白かったですね。試合は日本が69-49で勝利! 同じ日本人としてとても誇らしい気持ちになりました。
試合が終わった後、会場の外に出ると、日本選手団のバスを見送ろうと出待ちしているファンの方がいました。ふと「これはまた貴重な経験になるかも……!」と思い、僕たち家族も一緒に出待ちをすることに。「もう来るかな?」「まだかな?」と待つこと20分。宿舎へ帰るバスに乗り込もうと出てきた選手たちは、待っているファンの呼びかけに手を振ったり、一緒に写真を撮ってくれたり、笑顔で気持ち良くファンサービスをしてくれました。「待ってて良かった」と思い、とても嬉しかったのです。
この時、僕の心には大きな反省の念も湧いていました。ロッテ時代の僕は、試合後にバスが出るまで待ってくれていたファンの皆さんに、十分なファンサービスができなかったからです。試合の勝敗や自分のパフォーマンスの良し悪しに左右され、負ければ軽く手を挙げてバスに乗り込み、スマホを眺めてばかり。自分のことばかり考えて、球場まで応援に来てくれたファンの気持ちはほとんど考えることができなかったのです。
そして、いざ自分がファンの立場になり、選手に応援を届けたいとなって初めて、ファンの気持ちが分かったのです。笑顔ひとつで「待ってて良かった。次も応援しよう」と思ってもらえる。本当のファンサービスとはどういうことなのか。高校生たちからとても大切なことを教えてもらった気がします。
シーズン後半はいよいよ17日からスタート。そして同じ週末には「おぎさんぽ」が開催されます。束の間にはなりますが、日本から応援に来てよかったと思っていただけるよう、僕も全力で楽しみたいと思います。では、また次回!